油絵で有名な絵画『オフィーリア』を紹介。彼女に起こった悲劇とは

油絵で有名な作品でこの絵を見たことはありませんか?

この絵に描かれている女性、タイトルを見れば

あーなんとなくこの女性は「オフィーリア」という名前なんだな

と分かりますよね。

だけどなんで彼女は水の中にいるのでしょうか。

実は彼女はある文学作品が関係しています。

オフィーリアの実に一体何があったのでしょうか。

油絵で有名な作品『オフィーリア』の概要

作品名オフィーリア
作者ジョン・エヴァレット・ミレー
制作年1852年
技法・素材油彩/キャンバス
寸法76.2cm×111.8cm
所蔵テート・ブリテン

油絵の絵画作品『オフィーリア』は画家の

ジョン・エヴァレット・ミレー(以下ミレー)が描いた作品です。

ミレーは19世紀のイギリスの画家です。ラファエロ前派を代表する油絵の画家です。

そんな彼の描いた『オフィーリア』ですが、

なぜ彼女は水辺にいるのでしょうか。

実はある一つの物語がこの作品にはあるのです。

オフィーリアと『ハムレット』

オフィーリアはシェイクスピアの4大悲劇である『ハムレット』に登場するキャラクターです。

では『ハムレット』を見ながらオフィーリアの物語をみてみましょう。

『ハムレット』

ある時王様が急死します。

王様の弟は兄の奥さん(王妃)と結婚して、弟は後継者のデンマーク王になりました。

あるとき、

「亡くなったはずの王様の亡霊が城に現れる」

という噂を聞き、

亡くなった前の王様の息子であるハムレットが確かめに行きます。

すると本当に亡霊が現れました。

ハムレットは父である王様の亡霊から、

「自分の死は弟の毒殺であった。」と告げられます。

ハムレットは復讐を誓い、狂人のフリをして真実を確かめようとします。

弟王と王妃はその狂人の姿を心配したが、宰相ポローニアスが、

原因が娘オフィーリアへの実らぬ恋ゆえだと考えました。

父親の命令でオフィーリアはハムレットに探りを入れますが、

狂人の振りをするためにわざとオフィーリアを無下に扱います。

しばらくして、王(弟)が父を暗殺したという確かな証拠をつかんだハムレットは

母親である王妃と会話していた男を殺害し、復讐を果たします。

しかし、王妃と話していたのはオフィーリアの父ポローニアスだったのです。

オフィーリアの父親をハムレットは殺してしまったんですね。

恋人であるハムレットは狂人になり、自分をひどく扱い、さらには父親も殺されてしまうという悲しみから、オフィーリアも狂い始めます。

そしてついに、水辺で溺死をしてしまうのです。

その時のオフィーリアの様子はこう描かれています。

すてきな花輪を、垂れた枝にかけようと、柳によじ登ったとたん、意地の悪い枝が折れ、花輪もろとも、まっさかさまに、涙の川に落ちました。

裾が大きく広がって、人魚のようにしばらく体を浮かせて―――そのあいだ、あの子は古い小唄を口ずさみ、自分の不幸が分からぬ様子―――まるで水の中で暮らす妖精のように。

でも、それも長くは続かず、服が水を吸って重くなり、哀れ、あの子を美しい歌から、泥まみれの死の底へ引きずり下ろしたのです。」

そんな彼女の様子を描いたのがミレー作『オフィーリア』だったんですね。

油絵作品『オフィーリア』を詳しく鑑賞

ではあらためてこの油絵作品を見ていきましょう。

彼女の手にはちぎれた花の冠があります。この花輪を柳の枝にかけようとしたら川に落ちてしまいました。

彼女の目はうつろで、歌を口ずさんでいます。

ドレスが大きく広がって、まるで人魚のヒレのようです。

花の輪に使われているケシは花言葉で「Eternal sleep」つまり、「永遠の眠り=死」を暗示しています。

他にも花がありますが、それらについては記事の最後で考えています。

もしお時間あればそちらをご覧ください。

まとめ

油絵で有名な絵画作品『オフィーリア』はイギリスの画家ミレイが描いた作品です。

作品の主人公であるオフィーリアは、

シェイクスピアの文学作品『ハムレット』に登場するキャラクターであり、

彼女の悲劇を描いたものです。

ここでオフィーリアを紹介しましたが、

実はもっと深掘りすると色々なことが分かってきます。

下では

オフィーリアの持っていた花冠に使われている

花を

オフィーリアの持っていた花輪について

ミレイが描いた油絵作品『オフィーリア』のオフィーリアが持っている花輪ですが、

どんな花なのか、調べてみても分かりませんでした。

シェイクスピアの『ハムレット』でオフィーリアが狂ってしまい、でたらめな歌を歌っています。

その中にはいくつか花が登場しています。

そこでこれらの歌から花輪に入っている花の種類を紹介しようと思います。

また意味も含めているので、そちらも参考にご覧ください。

ローズマリー=思い出の花

オフィーリアはローズマリーを思い出の花と呼んでいます。

花言葉の「思い出」「追憶」がこれに対応しています。

パンジー=人恋うる花

彼女はパンジーを人恋うる花と表現しています。

パンジーには「もの思い」「私を思って」という花言葉もあります。

オフィーリアのハムレットに対する恋心が見て取れます。

これをハムレットに間違えて兄に渡していることから、ハムレットに対する愛情がみてとれます。

ウイキョウ

ウイキョウ・オダマキはハムレットの父親を毒殺した弟の王(クローディアス)に渡されました。

ウイキョウが象徴するのは、「おべっか」。王妃にはおべっかを使い、部下たちからはおべっかを受けるクローディアスにふさわしいです。

オダマキ

オダマキは不義密通、恩知らず、嫉妬などを象徴しています。

クローディアスは、兄の妃と結婚していたので、当時の近親相姦の罪を犯していました。

このことから、オダマキもクローディアス王にふさわしい植物だと考えられます。

ヘンルーダ

ヘンルーダには「悔恨」や「安らぎ」「あなたを軽蔑」するという花言葉があります。

オフィーリアはこの花をすぐに弟と再婚した王妃に渡していました。

王妃の早すぎる再婚、そしてそれに対する「恨みや悲しみ」がオフィーリアにあったのかもしれませんね。

デイジー

デイジーには「無邪気」「純粋」「純潔」「美人」「平和」「希望」があります。

オフィーリアの無邪気で純粋な恋を象徴しているように感じます。

スミレ

スミレの花言葉は「謙虚」「誠実」。があります。

そして紫のスミレの花言葉は「貞節」「愛」です。

これらのことからデイジー・スミレが彼女の純潔な愛を象徴していることが分かります。

これらの花から、ミレイは油絵の絵画作品『オフィーリア』では

何を選んだのでしょうか。

答えや解釈は人それぞれだと思うので、

皆さんで是非考えてみてくださいね。

次の構図から

どうしてオフィーリアが名画なのか。

その理由を画家の視点から検証していきます。

『オフィーリア』の構図のここがすごい

油絵で有名な作品『オフィーリア』の

構図をみていくと大まかに5つの点で優れていると

かんがえることができます。

  1. 丸く削れた上の両端
  2. 下の両端にある「ストッパー」
  3. わかりやすい主役
  4. 主軸(しゅじく)
  5. 支軸(しじく)

以上の5点ですね。

他にもあるかとは思いますが、

ここではこの5点を紹介します。

丸く削れた上の両端

いい構図だなと感じる名画や作品の共通点として

鑑賞者が長く見てくれるような工夫がされています。

その工夫の一つとして、端の処理方法です。

画面の端は画面において鑑賞者の目を

引っ張る力があるので、そこを処理する方法がいくつかあります。

『オフィーリア』でも

上の両端を丸いアーチにすることで端に目が持っていかれないようにされています。

下の両端にある「ストッパー」

では下の両端はどうでしょうか。

左下は水辺に自生する植物と

それが写る水面によってガードされています。

一方の右下端は、散った花冠の一部が端っこを守る様に

ストッパーの役割をしています。

分かりやすい主役

『オフィーリア』では、絵をあまり見ていない人でも

一瞬で主役が分かりやすいように工夫されています。

言わずもがなですが、この作品の主役は水辺に浮いている女性

「オフィーリア」の顔です。

ではこの顔がどうして主役だとわかるのでしょうか。

まず一つ目の理由として、脳が人の顔をいち早く見つける点から

彼女の顔が主役であることが分かります。

もう一つはコントラストの差です。

コントラストとは、隣り合った明るい部分と暗い部分の差のことで

この差が大きいとその場所が目立ちます。

では、それを踏まえたうえで彼女の顔を見てみましょう。

画像をモノクロにしてみます。

このように画像をモノクロにすると

彼女の顔と、水面が一番コントラストの差が強いことが分かりますよね。

このことから、コントラストが強い=主役であるということが

誰にでもわかるようにできています。

このコントラストの差が強いところはもう一つありますが、

これも画面内で重要な役割を持っています。

記事の後半で紹介しますので、

最後まで読むとその重要な役割がわかってきます。

主軸

また良い構図の条件ひとつとして、構図の中に流れがあるというのもあります。

言い換えるなら、目線がどう動けばいいのかわかるということです。

画面の大きな流れである主軸は一番目立つところ、

つまりオフィーリアが流れている川であることが分かります。

そして画面の左側には水辺の草、そして倒れかかった木があります。

この二つの要素が、主軸から画面の上へと視線を動かします。

支軸

画面の上にある木の流れに沿うと、今度は白い花が目に留まります。

これがこの作品において重要な役割を果たしています。

この花に線を入れるとこのような流れを持った構図であることが分かります。

実はこの線は主軸である流れにほとんど垂直になるようできているんですね。

このように主軸に対して垂直な線は

構図を支える役割を果たす支軸の役割を果たします。

もし支軸がない場合、横の流ればかりになって

退屈な構図になり、バランスが悪くなります。

この全体の流れに対して、アクセントのような役割を

支軸が持っています。

そして花の下には再び川が流れています。

こうすることで画面全体をぐるりと回ることができます。

このように画面全体に様々な工夫があることで

この『オフィーリア』が名画と言われることが分かると思います。

上の画像ではそのぐるりと回る流れの中に

引き寄せられるような工夫がいくつかありますので、

それをのせておきます。

こうやって見ると色々と工夫されていますね。

黄金比とか分割線は?

こういう絵画の構図の話になると、

黄金比や1/3分割の線に重なっている!

とうものがあると思います。

実際、引こうと思えばいくらでも引けますが

今回はあえてそのようなことは行っていません。

今回は、ちょっと別の視点で構図を見てほしいなと思い

分割線は省略させてもらいました。

最後に

今回は油絵で有名な作品『オフィーリア』を鑑賞しました。

どうして名画と言われるのかを構図で見てみると

また絵画の鑑賞が面白くなるかと思います。

面白いな、勉強になったなと、少しでも心が動いてくだされば幸いです。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

他にも有名な絵画作品を紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。

オフィーリアのように狂気的になってしまった画家ルイス・ウェインを紹介しています。