油絵の技法グレーズ技法って何?意味やメリット・デメリットを徹底解説

グレーズ技法って何?意味や由来

グレーズとは透明なフィルムを重ねるように色をのせる技法のことです。

グレーズの由来は英語の「Glaze」という単語からきています。

Glazeは日本語に訳すと「釉薬(ゆうやく)」という意味で

焼き物に釉薬をのせるように半透明な色をのせることから、

この技法のことをグレーズ技法と言います。

砂糖の液体(シュガーシロップ)をドーナッツに被せたものをグレーズドーナッツなんて言います。

つまり、グレーズ技法とは

[su_highlight background=”#fbf808″]半透明な色を重ねる技法のこと[/su_highlight]

だと思ってくださいね。

グレーズ技法を使った画家

ではそんなグレーズ技法はいつの時代から使われているのでしょうか。

グレーズ技法を使った最も代表的な画家を紹介していこうと思います。

ヤン・ファン・エイク

ヤン・ファン・エイクは油絵技法の確立者としてとても有名な画家です。

ヤンは1500年代のフランドル派の画家として、西洋美術史からも重要な位置づけにいます。

ヤンの作品『ファン・デル・パーレの聖母子』を見てみましょう。

彼の作品の超絶技巧も魅力的ですが、

この作品にあるこの赤いマントを今回は見ていきます。

この赤いマントは単純に赤色を塗っているのではなく、バーミリオン(黄色と赤を混ぜたような色)にマダーレーキ(暗い赤色)をグレーズしています。

そのため単純な赤色よりも深い色を表現しています。

グレーズ技法は油絵技法の始まった時から使われている技法だということが分かります。

グレーズ技法のメリット

ではグレーズ技法っていったいどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

グレーズ技法は

  • 深い色を作ることができる
  • 下の色を生かすことができる

というメリットがあります。

深い色を作ることができる

グレーズ技法最大のメリットとしては

深い色を作ることができる。

ということがあります。

ヤンの作品で少し紹介したメリットですね。

ただ単純に混ぜた色(混色)よりもグレーズで重ねた色(重色)の方が、単純な色にならず、深い色を表現することができます。

また、油絵初心者や油絵ベテランの方でも難しいとされる影の色をより簡単に作ることができます。

下の色を生かすことができる

グレーズ技法は半透明な色を重ねる技法なので、下に塗った色を生かすことができます。

同じような色を重ねて深い色を作るのはもちろんのこと、

カマイユ技法(グリザイユ技法)のような技法や

顔の肌などの微妙な凹凸やニュアンスが欲しいなどによく使われています。

写実(実物のようにとてもリアルな絵を描く)主義の画家ではグリザイユとグレーズ技法を多く採用しています。

私の場合もリアルな絵を描く場合グリザイユ技法をした後にグレーズ技法をよく使います。

描きこみがしやすい

先ほど紹介した下の色を生かすことができるというグレーズ技法のメリットと話は被りますが、

描きこみがしやすい

というのもグレーズ技法のメリットと言えます。

下絵の段階できっちりと描いておくと、

そのきっちり描いた下絵が(わずかですが)透けて見えるので、

グレーズ技法をして乾燥したら描きこむ。

描きこみが乾燥したらグレーズを重ねる。

という風に描きこみがしやすく

リアルに描くこともできますし、細密描写にも向いています。

グレーズ技法のデメリット

グレーズ技法のメリットがあれば必ずデメリットも存在します。

オモテがあれば必ず裏があるように当然のことです。

ここではグレーズ技法のデメリットと、それらを解決するための方法を紹介していこうと思います。

グレーズ技法は

  • どんな色になるのか経験が必要
  • 時間がかかる

という二つのデメリットが存在します。

どんな色になるのかわからない。

グレーズ技法のデメリットの一つ目として

どんな色になるのかが分からない

というものがあります。

よし!この色を作ろう!

と思って、グレーズをしてみると

実際にできた色が思ったよりも明るかったり、暗くなったり、下手をすると全く違った色になったりする場合があります。

これを解決するためには、経験を重ねると言ってしまえば簡単ですが、

具体的には混色、重色の知識を得ること

色を重ねたときの色見本を作る

などするとより早くグレーズ技法をマスターできます。

また、油絵具の場合、乾燥していないうちでしたら

画面から取り去ることもできるので、

めげずにガンガン色を重ねてみて

経験を重ねてみましょう。

時間がかかる

グレーズ技法のデメリットのふたつめとして

時間がかかる

というものがあります。

最初に紹介したヤンの『ファン・デル・パーレの聖母子』ではマダーレーキのグレーズを何回もかけています。

一層目のグレーズが乾燥したら、またグレーズをかけて、また乾燥したらグレーズをかけるということを何回かして立体感を描いています。

(画像ではわかりづらいですが、陰の部分はグレーズをたくさんかけているのですこし盛り上がっています。)

そのため、油絵具で行う場合、乾燥するのに数日かかるので、時間がかかるというデメリットがあります。

現在では沢山の油絵具やアクリル絵具の色が販売されているので、ある程度の色は他の色で描きこみ、

ここぞというところにグレーズ技法をすればこのデメリットは解決できます。

もしくは、早く乾くことのできるアクリル絵の具を使ったりするのも、解決する方法の1つだと思います。

まとめ

グレーズ技法は半透明の色を重ねる技法のことであり

英語のglaze、日本語だと「釉薬」という意味になります。

グレーズ技法は半透明の色を生かした深い色を作ることができ、下地が透けることから、描きこみができるというメリットがあります。

一方でグレーズ技法を有効活用するためには経験と知識が必要で、時間がかかるというデメリットがあります。

それらのデメリットは、混色や重色の知識を得ること、色見本を作ること、ある程度の色は混色で行い、ここぞというときにグレーズ技法を使う。

という方法で解決することができます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

他にも油絵の絵画技法の知識や西洋美術史など、皆さんのアートライフを充実させる内容を紹介しています。