油絵で有名な絵画作品『壺のある静物』を解説・紹介。

油絵で有名な作品『壺のある静物』を皆さんご存知でしょうか。

そうそうこの作品です。

個人的に好きな絵画作品で、

なんだかシンプルで神秘的に

かんじますよね。

この作品って一見シンプルで普通の油絵に見えますが、

じつはかなり計算された作品なんですよ。

そんな油絵の絵画作品『壺のある静物』を解説・紹介していこうと思います。

それではよろしくお願いします。

油絵で有名な作品『壺のある静物』の概要

作品名壺のある静物
作者フランシスコ・デ・スルバラン
制作年 1658年ー1664年
技法・素材 油彩、キャンバス
寸法 46cm×84cm
所蔵 プラド美術館、マドリード

油絵の絵画作品『壺のある静物』は

芸術家のフランシスコ・デ・スルバランが描いた油絵の絵画作品です。

制作年は1658年~1664年の間に描かれたと推定され

キャンバスに油絵具で描かれています。

現在はプラド美術館が所蔵しています。

油絵で有名な画家フランシスコ・デ・スルバランってだれ?

フランシスコ・デ・スルバランはバロック期のスペインで活躍した画家です。

バロック期って何?

バロック期とは16世紀末から17世紀初頭にかけて誕生した美術や文化の様式のことです。

この時代様々なものが大きく変化し、ダイナミックな光の対比表現や

大げさな身振り手振り、構図が主な様式です。

カラヴァッジョ作『キリストの捕縛』

カラヴァッジョなどが分かりやすいですね。

なんだか演劇を見ているようです。

フランシスコ・デ・スルバランの他の作品

フランシスコ・デ・スルバランの作品には

『壺のある静物』のほか、

『神の仔羊』や

『瞑想する聖フランシスコ』などの油絵の絵画作品が有名です。

彼の作品は構図や色彩センスがすごく勉強になるので、

時間があれば作品をスルバランの作品を

どんどん紹介・解説してみなさんと

共有していきたいと思います。

『壺のある静物』がなんだか気になる

この作品がなんとなく気になる、

なんとなく魅力的だなっと思った方もいるかとも思います。

ではどうして「なんとなく気になる」と思うのでしょうか。

その謎に迫っていきたいと思います。

モチーフ

まず謎に迫る前に描かれているモチーフについて説明します。

この油絵に描かれているのは、

まず台の上に四つの器がおかれています。

左からピューターの盆にのった銀メッキ製の杯。

白くて光沢のある素焼きの壺。

メキシコ産と考えられる粘土壺。

右端はピューターの皿に乗った壺です。

そしてそれらを真っ暗な部屋の中に

一方向から光が壺の質感や色を照らし出しています。

ピューターとは?

ピューターとは錫(すず)とよばれる金属を主成分とした合金のこと。

シンプルですが、それぞれの質感に合わせて

つるっとしていたり、マットな感じを表現しています。

金属の表現も見事です。

質感の表現でリアルな感じがよく出ていますよね。

光の方向

この作品が気になるなと感じる一つ目の要素は「光の方向」です。

4つの器の陰を見てみると、なんだか変な感じがしませんか?

なんとなく左上から光が当たっているんだなと思いますが

実は本来器の影ができるはずの部分に

影が描かれていないんですね。

違う視点

そして、4つのうちの両端の器。

ひとつの視点で描かれていないんです。

もし、同じ視点で描かれていたら、

もう少し皿や器のフチが細くなっているはずなんですね。

このように一見シンプルに見える作品ですが、

それらの違和感がなんとなくみなさんの脳に引っかかって

見てしまうのではないかなと思います。

どうしてこういう風に描いたのか

スルバランはどうしてこんな風に描いたのでしょうか。

あまりモチーフを観察していないから?

だけど質感表現をみれば彼はモチーフをよく観察していることがわかります。

そのことから彼はそれらを意図して描いていたと考えます。

まず一つ目の「影を描かない問題」は

陰を描かないとその対象物の輪郭がくっきりと見えるようになります。

そうするとリアルな感じよりもその場から離れているような

一種の違和感が生まれていきます。

そうするとそのモチーフが目立ちます。

もう一つの「違う視点問題」はそのものをよりらしく、魅力的に見せるためではないかと考えます。

例えば魚を描いたとします。

魚を描くとき、

みなさんだったらどう描きますか?

ほとんどの方は横から見た魚を描くのではないでしょうか。

また、人の目や口を描くときにも、横顔の目や口を描かず

正面から見た目や口を描くと思います。

このようにそのモチーフがらしく見える方向を

スルバランなりに工夫して、

一つの画面に納めたのではないかと考えます。

らしく見える方向はそのモチーフが一番魅力的

に見える方向だとも考えることができます。

構図も非常に魅力的ですが、これは記事の最後

「【考察】『壺のある静物』の構図」で少し考えてみました。

もし気になる方は記事の最後を見てくださいね。

まとめ

『壺のある静物』はスペインの画家「フランシスコ・デ・スルバラン」が描いた作品です。

4つの器と台が描かれており

特徴は器の陰が描かれていないこと、違う視点で描かれていること

が挙げられます。

こうすることでそのモチーフがよりらしく、魅力的に見えるので

このように描かれたと考えます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

【考察】『壺のある静物』の構図

ここからは絵描き目線でこの作品の構図を考えていきたいと思います。

絵を描く人の参考になれば幸いです。

この作品の構図を私なりに解釈するなら、

「横の線が強力な安定した構図」だと解釈できます。

横の支える線

まず作品が横長であることから、

横が強力に作用します。

次に強力な横の線として台の境目があります。

また、台のうしろの境目は

構図で安定感のあると言われる1/3に分割した線にかぶさります。

さらに言ってしまえば、壺の高さも

1/3分割線に近い位置で安定しています。

このことから、横の線が強力に作用していると考えることができます。

アクセントである縦の線

構図が横の線だと、特いえば安定している。

悪く言えば退屈です。

だけどこの作品は退屈には感じません。

これは器が縦の線を持っているからだと考えます。

器が縦の線を持ちアクセントとなっています。

また、1/3で分割すると、両端と中央の壺二つが

それぞれの区画にきれいに収まっています。

1/3で分割すると、うつわがその中に納まっています

これらが横の強力な線のアクセントとなって

魅力的な構図を作っているがわかります。