猫の絵で有名な画家・歌川国芳の55匹の猫!『其のまま地口 猫飼好五十三疋』の紹介・解説

生涯たくさんの猫を描いた江戸時代の絵師(画家)歌川国芳(うたがわくによし)は、「猫づくし」というジャンルの絵を描きました。

その中でも、特に猫づくしの作品『其のまま地口 猫飼好五十三疋』を紹介します。

それではよろしくお願いします。

53匹の猫が描かれた絵画作品

歌川国芳の作品である

『其のまま地口 猫飼好五十三疋』(そのまま-ぢぐち・みやうかいこう-ごじうさんひき)

には総勢53匹の猫が描かれています。

『其のまま地口 猫飼好五十三疋』

作品名だけ見ると一体何のことやらとなりますが、これは『東海道五十三次』というものが関係します。

作品名其のまま地口 猫飼好五十三疋
(そのまま-ぢぐち・みやうかいこう-ごじうさんひき)
作者歌川国芳(うたがわくによし)
制作年嘉永元年(1848年)
素材/技法浮世絵(木版画)
サイズ
所蔵

東海道五十三次とは、江戸時代に整備された道路のうち、東海道と呼ばれる道に配置された53の宿場のことです。

その宿波の名前をそのまま地口(語呂合わせ)で猫の仕草を表現した作品です。

猫飼好五十三疋(みやうかいこうごじうさんひき)は東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)をもじっているものです。

ではこの53匹の猫+2匹の猫を東海道五十三次と一緒に見ていきましょう。

猫と歩く東海道五十三次

まずは上巻19匹の猫たちを見ていきましょう。

1匹目『日本橋』→『二本だし』

日本橋(にほんばし)の猫は「二本だし」。

繩で縛ってあるかつお節(だし)を二本取ろうとしている猫を描いています。

猫の右手ががっしりとかつお節をつかんでいます。

繩がしっかりと描きこまれています。

2匹目『品川』→『白かお』

品川(しながわ)の猫は「白かお」。

白猫の顔が描かれています。

首輪をしていてすましたような顔をしています。

見ている先には何かあるのでしょうか。

3匹目『川崎』→『かば焼き』

川崎(かわさき)の猫は『かば焼き』。

三毛猫がくんくんとかば焼きを嗅いでいます。

間違いなくおいしいのでしょうね。

漆で塗られた岡持ち(食べ物をはこぶための箱)

にはお店の名前が描かれているのでしょうか。

4匹目『神奈川』→『かぐカハ』

神奈川(かながわ)の猫は『かぐカハ』。

茶色の猫が竹皮に包まれた小包を嗅いでいます

嗅ぐ皮と言う意味でしょうか。

5匹目『程ヶ谷』→『のごかい』

程ヶ谷(ほどがや)の猫は『のどかい』。

のどを描いている猫を描いています。

ちらっと見えるねこふぐりが可愛いですね。

6匹目『戸塚』→『はつか』

戸塚(とつか)の猫は『はつか』。

ハツカネズミを見つけた猫が捕まえと用としています。

7匹目『藤沢』→『ぶちさば』

藤沢(ふじさわ)の猫は『ぶちさば』。

ブチ猫がサバを盗み出している様子を描いています。

ブチがかわいいですね。

8匹目『平塚』→『そだつか』

平塚(ひらつか)の猫は『そだつか』。

子猫と母猫が描かれています。

母親が子猫にしっかりと「そだつか」なと思っているのでしょうか。

9匹目『大礒』→『おもいぞ』

大礒(おおいそ)の猫は『おもいぞ』。

おおきなたこを引きずっている猫が描かれています。

おもいぞ、おもいぞとひっぱっています。

10匹目『小田原』→『むだどら』

小田原(おだわら)の猫は『むだどら』。

ネズミに逃げられてしまったドラ猫が描かれています。

「むだ」に骨を折ってしまった「どら」猫ですね。

11匹目『箱根』→『へこね』

箱根(はこね)の猫は『へこね』。

ネズミに餌をとられてへこ寝(こうばこ座りして寝る)する猫が描かれています。

猫のエサ入れはアワビの貝殻です。

12匹目『三島』→『三毛ま』

三島(みしま)の猫は『三毛ま』。

三毛猫の魔物(「ま」もの)が描かれています。

手拭いを被っていて、前が見えなくなっています。

13匹目『沼津』→『なまず』

沼津(ぬまづ)の猫は『なまず』。

なまずにちょっかいをかける猫が描かれています。

怖がっているようにも見えますね。

14匹目『原』→『どら』

原(はら)の猫は『どら』。

ドラ猫が描かれています。

15匹目『吉原』→『ぶちはら』

吉原(よしはら)の猫は『ぶちはら』。

お腹にぶち(くろい模様)のある猫が描かれています。

16匹目『蒲原』→『てんぷら』

蒲原(かんばら)の猫は『てんぷら』。

天ぷらをじっと見ている猫が描かれています。

あと少ししたらとっちゃいそうですね。

17匹目『由井』→『たい』

由井(ゆい)の猫は『たい』。

体を盗み出しているブチ猫が描かれています。

サザエさんの曲を聴いたときのドラ猫はこんな感じに見えます。

18匹目『興津』→『おきず』

興津(おきつ)の猫は『おきず』。

そのまま「おきず」に寝ている猫を描いています。

きっとまぶしいいけど気持ちがいい天気なんでしょうね。

19匹目『江尻』→『かじり』

江尻(えじり)の猫は『かじり』。

かつお節をまる「かじり」している猫が描かれています。

かつお節を両手でしっかりとおさえているところが猫らしいです。

さて上編が終わりました。

中編ではこれまた異色の猫が登場します。