みなさんこんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。
今回は猫の日本画と言うことで、日本画に描かれている有名な猫について紹介したいと思います。
昔から猫は日本画でも数多く描かれています。
私も油彩絵具で猫の絵を描いているので、過去の巨匠たちの猫を鑑賞しています。
その中で、これだけは絶対に押さえておきたい2匹の猫の日本画作品を紹介・解説したいと思います。
それではお願いします。
猫1匹目『黒き猫』
まず一匹目は黒猫が描かれた有名な作品です。
作品名は『黒き猫』。
作者は菱田春草(ひしだしゅんそう)と言う明治日本を代表する日本画家です。
37歳の若さで亡くなった日本画家です。
この作品は、展覧会ぎりぎりにわずか1週間足らずで描き上げたものです。
現在では日本の重要文化財になっています。
黒猫は輪郭線がほとんど描かれておらず、体はグラデーションのみで描かれており猫のふわふわとした質感がよく出ています。
この描き方は当時の日本の線をしっかり描くという伝統をむしして、ぼやっとしていたので、朦朧体(もうろうたい)と言われていました。
背景は1日だけ使い、残りの4日間は猫を描いていたそうです。
黒猫へのこだわりがうかがえます。
ちなみに、『白き猫』という猫の作品も描いています。
『白き猫』の場合、毛をしっかり描いているので、また『黒き猫』とは違う趣があります。
他にも猫の日本画を描いているので、菱田春草も猫が好きなのかもしれません。
猫2匹目『班猫』
2匹目の猫は、美しい空白とのコントラストが美しい作品です。
作品名は『斑猫(はんびょう)』。
この作品は日本画家「竹内栖鳳(たけうちせいほう)」が描いた日本画作品です。
竹内栖鳳(たけうちせいほう)
戦前の日本画家。近代日本画の先駆者で、画歴は半世紀に及び、戦前の京都画壇を代表する大家である。
Wikipediaより引用
竹内栖鳳は、戦前の日本画家で、「動物を描けば匂いまで描く」と言われるくらい動物の表現が優れていると言われています。
斑猫と栖鳳の出会い
作品を見る前にこの斑猫(はんびょう)と栖鳳のちょっとしたエピソードがあります。
栖鳳が沼津(静岡県)に滞在しふと外に目をやりました。
すると、八百屋の前に猫がいました。
そこで栖鳳は「そうだ、猫を書こう」と思い立ったといいます。
どうしてもその猫を描きたかった栖鳳は
八百屋の奥さんに「譲ってほしい」と直談判し譲ってもらいました。
絵を描くアトリエでに自由に猫を遊ばせながら丹念に観察して
この作品が生まれました。
ではこの猫の作品を鑑賞してみましょう。
猫の毛並み
エメラルドグリーンの瞳がチャームポイントのキジ白(キジトラの模様に白の毛並みが混ざった)猫です。
ややグラデーションのあるふわふわした毛並みに一本一本細かい筆で毛が描かれています。
これは日本画の伝統的な技法『毛描き(けがき)』と呼ばれるものです。
実際の猫の毛並みにも、綿毛のようなふわふわした毛と、細くて少し硬い毛があるので、この表現を見たときには
「本当に猫をよく観察していてすごいな。」
と脱帽しました。
しかも、体と顔の毛描きの長さが異なっていて、
顔の毛は短くなっていて、体の毛は顔の毛より長くなっているのも見ごたえがあります。
さらに毛の色もこげ茶から白色の毛が描かれており、猫の毛並みの色を奥深くしています。
猫の瞳
エメラルドブルーの瞳の中心は鮮やかなブルー、その外側はエメラルドグリーン、
そしてさらに外の瞳の下の部分は黄土色をしており、猫の複雑な瞳の色を表現しています。
黄土色が、ブルーとエメラルドグリーンをより鮮やかに引き立てています。
また、目頭から少し見える白めの部分が、こちらを見ていることがよくわかるようになっています。
目の上のまつげもしっかりと描かれています。
猫の鼻・口
猫の鼻にはひげと、ひげ穴が描かれています。
よく観察すると、ちゃんと鼻筋や口の立体感が描かれていて、猫の顔をしっかりと観察していることが見て取れます。
口に少しぶちがついているのがかわいらしいです。
このようにみていると、栖鳳がいかに動物をよく見て観察しているのかよくわかりますね。
まだまだ紹介したい猫がいます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
菱田春草の黒き猫、それを詳しく載せた記事はこちら
今回の記事では、日本画の猫に焦点を合わせましたが、
世界の猫の絵画作品にはまだまだたくさんの猫がいます。
もしまだ猫を見たいという読者の方がいましたら下の記事を是非見てください。
中世・近代の猫の絵画はこちらの記事
それに加えて、昔のヨーロッパだと猫を描く場合、寓意(ぐうい)というなにかしらの意味を含んで、絵に描きこまれる場合があります。
そんなとき一体どう意味があるのか。
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