あるときサイゼリヤに行ったとき
壁にやたらと絵がかけられていました。
これは絵を描くものとして気になって
店内を見回すと何枚か飾られていました。
「サイゼリアに飾られている絵画って何だろうと」
思い調べてみました。
そこで今回はサイゼリヤの絵画を一挙にまとめて
モデルや元ネタがどんな作品なのか
くわしく解説していこうと思います。
サイゼリヤの絵画一覧
サイゼリヤに飾られている絵画は
調べてみると
- フラ・アンジェリコ『受胎告知』
- アンドレア・マンテーニャ『アメーラ・デッリ・スポージ』
- レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』
- ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』
- ドメニコ・ギルランダイオ『最後の晩餐』
- ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』
- ラファエロ・サンティ『聖体の論議』
- ラファエロ・サンティ『アテネの学堂』
- ミケランジェロ『アダムの創造』
- ラファエロ・サンティ『ガラテイアの勝利』
- ラファエロ・サンティ『システィーナの聖母』
- ラファエロ・サンティ『魚の聖母』
- ロッソ・フィオレンティーノ『リュートを弾く天使』
- アレクサンドル・カバネル『ヴィーナスの誕生』
- ウィリアム・ブグロー『アムールとプシュケー、子どもたち』
の15点が現在見受けられます。
それぞれ簡単に紹介しますね。
フラ・アンジェリコ『受胎告知』
作品名 | 受胎告知 |
作者 | フラ・アンジェリコ |
制作年 | 1440~1445年 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 230cm×297cm |
所蔵 | サン・マルコ美術館 |
1つめの作品はフラ・アンジェリコ作『受胎告知』です。
右側の女性はマリア、
左側のカラフルな翼を生やしたのは天使ガブリエルです。
受胎告知(じゅたいこくち)と呼ばれるテーマを描いています。
受胎告知
受胎告知は
マリアと呼ばれる女性が
天使ガブリエルから
「あなた妊娠しています。おめでとうございます」
と告げられる瞬間を描いたシーンです。
しかし、マリアは処女のため、
妊娠することはあり得ませんでした。
「私、男の人は知らないのに」
と驚いている様子と一緒に描かれることが多いです。
このマリアと呼ばれる女性は
キリスト教の開祖イエス・キリストの
お母さんですので、この妊娠で身ごもったのは
イエス・キリストということになります。
この受胎告知のシーンはキリスト教の人たちが
キリスト教を広めたい!
ということで中世ヨーロッパ以降から
よく描かれる題材です。
この受胎告知は
大体
- 驚いた女性(マリア)
- 天使ガブリエル
- 閉じられた庭
の三つのモチーフ・象徴が描かれています。
後で紹介しますが、
サイゼリアに飾られている絵には
もう一個受胎告知を描いたものがあります。
その作品と比較して紹介したいので
後でそこでくわしく紹介しますね。
アンドレア・マンテーニャ『アメーラ・デッリ・スポージ』
作品名 | アメーラ・デッリ・スポージの天井画 |
作者 | アンドレア・マンテーニャ |
制作年 | 1463年~1474年 |
技法/素材 | 天井画 |
サイズ | 不詳 |
所蔵 | ドゥカーレ宮殿(イタリア・マントヴァ) |
2つ目の作品はアンドレア・マンテーニャ作
『アメーラ・デッリ・スポージ』
です。
これはイタリアにあるドゥカーレ宮殿の
天井に描かれた天井画と言われるものです。
サイゼリアにも天井に描かれていますね。
このアメーラ・デッリ・スポージは日本語でいうと
「夫婦の間」と言い
ドゥカーレ宮殿内の「夫婦の間」
というところに描かれているから
このタイトルになっています。
まるで下から見上げているように見えますよね。
これは立体感をより強調する短縮法
という方法が使われています。
まるで奥に空が続いているような
不思議な感覚を得ることができます。
天使たちが描かれているので
その先には天国があるのかなと
想像することもできます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』
作品名 | 受胎告知 |
作者 | レオナルド・ダ・ヴィンチ |
制作年 | 1472年~1475年頃 |
技法/素材 | 油彩・テンペラ/板 |
サイズ | 98cm×217cm |
所蔵 | ウフィツィ美術館、フィレンツェ |
この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチ作『受胎告知』
です。
一番最初に紹介したフラ・アンジェリコと
同じテーマをレオナルドが描いたものです。
受胎告知のモチーフ・象徴
受胎告知には
- マリア
- 天使ガブリエル
- 閉じられた庭
の三つのモチーフが描かれると言いました。
実際に二つを比較しながら見ていきましょう。
まずマリアを見てみると
アンジェリコの場合、お腹を押さえるポーズ、
レオナルドの場合、左手を上げていることで
驚きを表現しています。
次に天使ガブリエルを見てみましょう。
翼が生えています。
アンジェリコの場合は
ネオン街みたいなカラフルな翼をしていて、
レオナルドの場合は鳥の翼のような
リアルな表現をしています。
最後「閉じられた庭」についてです。
この閉じられた庭とは
柵やへいに囲まれた庭
のことで「処女」を象徴しています。
庭=女性を見立て
そこに誰も立ち入っていない
ということで「処女」を表現しているわけですね。
アンジェリコの場合は柵で囲まれており
レオナルドの作品は塀で囲まれています。
このように塀や柵で囲まれていて
閉じられた庭を表現しています。
この受胎告知は
もっとたくさんの
意味や象徴が込められていますが
くわしく話すと
長くなる(記事がひとつかけます笑)ので
ここでは簡単に紹介します。
また色々な画家が表現しているので
もし美術館に行く機会があった時には
画家ごとの違いや共通点を
探してみると面白いですよ。
サンドロ・ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』
作品名 | 春(プリマヴェーラ) |
作者 | サンドロ・ボッティチェリ |
制作年 | 1482年頃 |
技法/素材 | テンペラ |
サイズ | 203cm×314cm |
所蔵 | ウフィツィ美術館、フィレンツェ |
次に紹介するのは
サンドロ・ボッティチェリ作『春(プリマヴェーラ)』です。
この作品はテンペラと呼ばれる技法で描かれており、
横幅三メートルを超える大きな作品です。
春(プリマヴェーラ)って?
この作品のテーマはずばり「春」を表現しています。
春を感じるものをギュッと濃縮した作品です。
現代でいうと
新しい出会いとか、新しい恋とか、桜とか、誕生とか
そんなかんじのもを一つにまとめた感じですね。
作品には
- マーキュリー
- 三美神
- キューピッド
- ヴィーナス
- フローラ
- クローリス
- ゼビュロス
というキャラクターを描いており
これらのキャラクターたちは
それぞれ個性的なエピソードや意味を含んでいます。
またこの作品の依頼者はメディチ家という
当時イタリア・フィレンツェの名家
のために描かれた作品でもあります。
NHKびじゅチューン!のモデルにもなっているので、
そこで詳しく解説しています。
僕もサイゼリアで新入生とご飯を食べた思い出があるので
この作品を見ると懐かしい春の思い出がよみがえります。
ドメニコ・ギルランダイオ『最後の晩餐』
作品名 | 最後の晩餐(さいごのばんさん) |
作者 | ドメニコ・ギルランダイオ |
制作年 | 1482~1486年頃 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 不詳 |
所蔵 | サン・マルコ教会、フィレンツェ |
次の作品はドメニコ・ギルランダイオ作『最後の晩餐』です。
これも受胎告知と同じくらい有名な画題です。
絵画作品も多く残っており
レオナルドの『最後の晩餐』がこのテーマの中では一番有名です。
サイゼリアではギルランダイオのほうを選んだわけですね。
最後の晩餐
イエス・キリストと
12人の信者(12使徒)たちが
イエスキリストが処刑される前夜の夕食のシーンを描いた
ものです。
実はこの中にイエス・キリストを裏切った人がいます。
皆さんわかりますか?
手前の変な位置にいる男性がいますよね。
この男性がイエス・キリストを裏切りました。
この男性の名前はユダ。
ユダはたいてい「最後の晩餐」で
変な位置にいたり変な仕草をしていて
他の使徒たちと区別できるようになっています。
今回の場合は、みんな一直線に並んでいるのに
一人だけ違う。
つまり一人だけ別の考え方をしている。
ということから裏切り者と考察することができます。
ちなみにユダの隣に猫がいますが、
これはキリスト教において
邪悪さや悪魔を象徴しているので
ユダに悪魔がささやいたか、
ユダに魔が差して裏切った
ということも分かります。
ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』
作品名 | ヴィーナスの誕生 |
作者 | サンドロ・ボッティチェッリ |
制作年 | 1483年頃 |
技法/素材 | キャンバスにテンペラ |
サイズ | 172.5cm×278.5cm |
所蔵 | ウフィッツィ美術館、フィレンツェ |
次の作品はボッティチェリ作『ヴィーナスの誕生』です。
血なまぐさいヴィーナスの誕生
この絵画作品のテーマであるヴィーナスの誕生ですが、
ローマ神話の女神ヴィーナス
が誕生するシーンを描いたものです。
女神ヴィーナスは愛と美の女神であり
誕生の仕方がこれまた独特です。
そもそもヴィーナスには母親がいません。
ヴィーナスの誕生を簡単に言うと
ゼウスが父親の男性器を鎌で切り取って
それが海に落ち、泡となります。
その泡から生まれたのがヴィーナスです。
何とも血なまぐさい誕生ですね。
そのあと、西風の神様ゼピュロスに吹かれて
キプロス島に流れ着きました。
この作品で中央にいる女性がヴィーナス。
左側でフーフー息をふいている男性がゼピュロス。
右側に服を着せようとしているのは
時間や季節の神様のホーラーだと考えられます。
ラファエロ・サンティ『聖体の論議』
作品名 | 聖体の論議(せいたいのろんぎ) |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年 | 1509~1510年 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 500cm×700cm |
所蔵 | 使徒宮殿(バチカン宮殿)、バチカン市国 |
次に紹介するのはラファエロ・サンティ作『聖体の論議』です。
この作品は壁一面に描かれている作品で、
バチカン宮殿内の壁に描かれています。
聖体の論議
この作品は聖体の論議というものをテーマにして描かれています。
イエスキリストの死んだ後の体(聖体)について
学者たちが論議している場面だと考えられています。
画面の上に描かれているのはイエスキリストのいる天上界。
下に描かれているのは総勢40人をこえる
論議をかわす神学者たちです。
ラファエロ・サンティ『アテネの学堂』
作品名 | アテネの学堂(アテナイの学堂) |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年 | 1509~1510年 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 500cm×700cm |
所蔵 | 使徒宮殿(バチカン宮殿)、バチカン市国 |
同じくこの作品もバチカン宮殿内に描かれている壁画です。
作品名は『アテネの学堂』です。
アテネの学堂の人々
アテネの学堂に描かれる人物は
ギリシャ時代の有名な哲学者たちです。
プラトンやアリストテレスなど
学生の時学んだことのある人物たちが
描かれています。
ミケランジェロ『アダムの創造』
作品名 | アダムの創造 |
作者 | ミケランジェロ |
制作年 | 1508~1512年 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 480cm×230cm |
所蔵 | システィーナ礼拝堂、バチカン市国 |
次に紹介するのはミケランジェロ作『アダムの創造』です。
この作品は上で紹介した二つの作品と同じように
バチカン市国にある作品です。
この作品はシスティーナ礼拝堂という建物の
天井に描かれたものです。
アダムの創造
アダムの創造は
旧約聖書と呼ばれる書物の中で描かれる
初の人類アダムが神によって創造されるシーンが描かれています。
アダムは旧約聖書内において
神様から土から作られたとされており
この作品は土で作られたアダムに
神様が生命を吹き込もうとする
まさにその瞬間を描いているとされています。
ちなみに右側が神様。
左側がアダムだと考えられています。
ちなみにですが、
このあと神様がアダムの肋骨を抜き取って
そこから人類初の女性イブが誕生します。
ラファエロ・サンティ『ガラテイアの勝利』
作品名 | ガラテイアの勝利 |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年 | 1512年 |
技法/素材 | フレスコ画 |
サイズ | 295cm×225cm |
所蔵 | ヴィラ・ファルネジーナ、ローマ |
この作品もラファエロが描いた作品です。
サイゼリアはラファエロの作品を
めちゃめちゃ採用していますね(笑)
作品名は『ガラテイアの勝利』です。
ガラテイアの勝利
絵画作品『ガラテイアの勝利』は
アンジェロ・ポリティアーノの詩
『馬上槍試合』の物語を参考にしたものです。
その中に登場するガラテイアと呼ばれる
海の妖精(ニュンペー)を中心に描いたものが
この作品です。
ラファエロ・サンティ『システィーナの聖母』
作品名 | システィーナの聖母 |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年 | 1513~1514年頃 |
技法/素材 | キャンバスに油彩 |
サイズ | 265cm×196cm |
所蔵 | アルテ・マイスター絵画館、ドレスデン |
この作品はラファエロ作『システィーナの聖母』です。
中央に描かれているのは
赤ちゃんのイエスを抱くマリアです。
最初に紹介したイエスキリストのお母さんですね。
キリスト教では聖母と言えばマリアのことを指します。
左右には聖人がはいちされており
左側にいる男性は聖シクストゥス、
右側にいる女性は聖バルベラが描かれています。
この二人はこの作品を依頼した修道院が描くように
と依頼したと考えられています。
サイゼリアに置かれているのは主題はカットされていて
下の天使たちをフォーカスしています。
この作品は構図的に非常に優れているので
また別の機会があれば紹介したいです。
ラファエロ・サンティ『魚の聖母』
作品名 | 魚の聖母 |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年 | 1513~1514年 |
技法/素材 | 油彩(木板からキャンバスへ移植) |
サイズ | 215cm×158cm |
所蔵 | プラド美術館、マドリード |
この絵画作品も聖母マリアを描いています。
作品名は『魚の聖母』です。
左側には天使ラファエルと
魚を持った少年トビアス、
右側にはライオンと聖ヒエロニムス
右側にはライオンと聖ヒエロニムス
が配置されています。
天使ラファエルと少年トビアス
この作品に描かれている少年トビアスは
天使ラファエルの導きで川で魚を取り
その魚の内蔵で彼の父親の目を治し
その上花嫁から悪魔を払ったという伝説があります。
聖ヒエロニムスとライオン
この聖ヒエロニムスはあるとき足を引きずっているライオンを見つけます。
よく見ると足にとげが刺さっていていました。
それを抜いてあげるとライオンは彼と親しくなり
一緒に生活するようになりました。
このエピソードから聖ヒエロニムスが描かれるときには
ライオンとセットで描かれることがあります。
いわゆるアトリビュートと呼ばれています。
ロッソ・フィオレンティーノ『リュートを弾く天使』
作品名 | リュートを弾く天使 |
作者 | ロッソ・フィオレンティーノ |
制作年 | 1512年 |
技法/素材 | 板に油彩 |
サイズ | 39cm×47cm |
所蔵 | ウフィツィ美術館、フィレンツェ |
この作品はフィオレンティーノ作『リュートを弾く天使』です。
リュートと呼ばれる楽器を天使が弾いている様子を描いています。
サイズはA3のコピー用紙を少し大きくしたぐらいですね。
行ったことのあるサイゼリアでもこの作品がありましたが、
実物よりも大きい作品として設置されていましたね。
この作品ってなんだろう。
というのをきっかけにこの記事を書いたので
個人的に少し思い入れがあります。
アレクサンドル・カバネル『ヴィーナスの誕生』
作品名 | ヴィーナスの誕生 |
作者 | アレクサンドル・カバネル |
制作年 | 1863年 |
技法/素材 | 油彩、キャンバス |
サイズ | 130cm×225cm |
所蔵 | オルセー美術館、パリ |
1500年前後でしたがこの作品は一気に飛んで1863年に描かれたものです。
皆さんご存知『ヴィーナスの誕生』を描いた絵画作品です。
この作品はサロン・ド・パリ
(日本でいうところの日展のような
とにかく大規模な公募展)
に出品され入選し、
当時「芸術の王道」として称賛され、
ナポレオン三世が個人的なコレクションとして買い上げています。
ウィリアム・ブグロー『アムールとプシュケー、子どもたち』
作品名 | アムールとプシュケー、子どもたち |
作者 | ウィリアム・アドルフ・ブグロー |
制作年 | 1890年 |
技法/素材 | キャンバスに油彩 |
サイズ | 60cm×71cm |
所蔵 | 個人蔵 |
最後に紹介するのは
ウィリアム・ブグロー作『アムールとプシュケー、子どもたち』です。
アムールとプシュケー
この作品の題材であるアムールとプシュケーは
アムールはキューピッドを指し、
プシュケーはギリシャ神話に登場する人間の娘です。
この二人を子供の姿にして描いたのがこの作品です。
まとめ
サイゼリアに飾られている15作品を紹介しました。
ほとんどイタリアのルネサンス期に描かれた作品なので
サイゼリアがイタリアを意識して作品を選んでいるのだなと感じました。
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