アトリビュートって何?アトリビュートの解説と作品

アトリビュートって何?アトリビュートの解説と作品

こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。さて今回は、アトリビュートについて紹介します。

アトリビュートって何?聞くとなんだか難しそうな単語ですが、安心してください。できるだけかみ砕いて解説します。

アトリビュートがわかれば、絵画の観賞がもっと楽しくなると思いますよ。それではよろしくお願いします。

アトリビュートとは

アトリビュートとは、広辞苑から引用すると以下のように記載されています。

アトリビュート【Attribute】

美術表現で、神や人物の素性・特徴を明らかにする持物(じもつ)。

岩波書店『広辞苑 第六版』「アトリビュート」より引用

つまりアトリビュートとは、描かれている人物を特定するための道具です。

例えば、ベレー帽を被ってGペンを持っている絵を見たときに、この人は漫画家だ!と直感的に感じることがあります。この時のベレー帽とGペンがアトリビュートになるわけです。

ベレー帽+Gペン=漫画家だ!

実際西洋東洋問わず、神様や仏様を描いた作品には多くのアトリビュートを使って表現しています。

その中でも絵画作品には沢山のアトリビュートが仕組まれています。具体的な例を見ていきましょう。

アトリビュートの作品例

アトリビュートをよく用いたものとして神様や仏様を描いた絵(宗教画)があります。その中でキリスト教の宗教画からアトリビュートを紹介します。

聖母マリア

聖母マリアはイエス・キリストの母親として有名ですね。実はマリアという名前はキリスト教においてたくさんいます。なのでアトリビュートでしっかりと見分ける必要があります。

例としてレオナルド・ダ・ヴィンチ作『受胎告知』を挙げます。

レオナルド・ダ・ヴィンチ作『受胎告知』1472年ごろ

この作品には聖母マリアが描かれています。なぜわかるのか。そう、アトリビュートがあるからです。

ここからは3つのアトリビュートを見つけることが出来ます。皆さんも少し上に戻して画像から見つけてみてください。ヒントは「植物」と「服」です。

 

 

正解は左の天使が持っている白百合、右の女性が着ている赤色の服、青色のマントが聖母マリアを表しています。

白百合は、その花の白さから乙女の純潔を表し、聖母マリアの清らかさを表しています。

また、赤色の服は、その赤が神様の慈愛を表すものとされており、神様に祝福されたマリアにふさわしい色と言えます。

最後の青色のマントは天の真実を表すと言われています。青は雲一つない晴れた空を意味する=真実ということからきているのではと考えます。

典型的な聖母マリアの服装、こちらまで祈りたくなるような美しさです。

その他にも聖母マリアのアトリビュートとして閉ざされた庭(聖母マリアの処女性)、処女になつくと言われるユニコーン(一角獣)などが挙げられます。

処女のみになつくと言われるユニコーン。馬と比べると小さいです。構図的にこの大きさが妥当なのでしょうか。

その他にもまだまだありますので、気になった方は「まとめ」の後のそのほかの作品例を見てくださいね。

まとめ

アトリビュートは描かれているものを特定するための道具で、それらは西洋東洋問わず、様々なところでみられています。

アトリビュートは文字が読めなかった人がわかるように、そして誰もが見たときにわかりやすくなるために発達していったのではないでしょうか。

皆さんも日常生活の中にあるアトリビュートを探してみると面白いと思いますよ。

それではありがとうございました。

この後はアトリビュートがある人物を2つほど紹介させていただきます。より教養を深めたい方にお勧めしていますので、お時間ある方は是非読んでください。

アトリビュートの補足作品例

アトリビュートに特に力を入れていたのはキリスト教だと個人的に考えます。誰にでも広く教えを広めたいという気持ちが表れているのかなと思います。なのでアトリビュートの例としてキリスト教の登場人物を紹介したいと思います。

聖ヒエロニムス

聖ヒエロニムスはキリスト教に登場する聖人です。

彼は聖書をラテン語に翻訳しました。そんな彼のアトリビュートはライオンです。これはある時、修道院に入ってきたライオンの足からとげを抜いて救ったことに因んでいます。

ライオンの前足からとげを抜いています。かなり真剣な表情をしています。

他にもアトリビュートとして、聖書のラテン語翻訳をしたことから書物と一緒に描かれていたり、赤い帽子と赤い服が画面に存在しています。

赤い帽子と赤い服はヒエロニムスがキリスト教に目覚める前、枢機卿という職についており、その証として赤い帽子と赤い服を身にまとっていたためです。画像にも赤い帽子があります。

洗礼者ヨハネ

洗礼者ヨハネはナザレのイエス(キリスト教のイエス・キリスト)に洗礼をした方です。彼のアトリビュートとしてラクダの皮衣、斧と切り株、杖状の十字架です。

十字架の杖、ラクダの皮衣が画面下に見えます。

ラクダの皮衣は『マタイによる福音書』から

らくだの皮衣を着、腰に革の帯をしめ、いなごと野蜜を食べ物とする人物

『マタイによる福音書』第3章より引用

と記述されているためです。

斧と切り株はキリスト教における「悔い改め」(神に対して罪を悔い、心を改めて霊的生活によみがえる誓いをすること。改悛(かいしゅん)。)を示しています。

これは、またもや登場するマタイによる福音書から引用しています。

迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか。 だから、悔改めにふさわしい実を結べ。 自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。 わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。

『マタイによる福音書』第3章より引用

要するに悔い改めをしないのは、斧で刈り取られ火の中に投げ込まれる木と一緒だということを言っています。

悔い改めはヨハネのスローガンで、その代名詞である斧と切り株がアトリビュートになったのではないでしょうか。

足元に切り株、左下に羊が見えます。羊はお疲れのようです。

杖状の十字架ですが、これは洗礼者であることと同時に羊飼いであることの象徴ではないかと考えます。

『ヨハネによる福音書』では

その翌日、ヨハネは、自分の方へイエスが来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ。

『ヨハネによる福音書』第1章、29節より

と述べています。つまり、小羊を導いたもの=羊飼いであることを示すために杖なのではないでしょうか。

「あの人、神の小羊だから」と真顔で訴えています。

また、キリスト教では悩んで迷っている人を小羊にたとえていますので、洗礼を行い、悔い改めをしていたヨハネは小羊を導く羊飼いであったのではないかと考えられます。

したがって、羊飼いが持つ杖を洗礼者ヨハネのアトリビュートにしたのだと考えます。

この画像にも羊がいます。可愛いですね。

十字架に関しては記述はありませんが、キリスト教信者で殉職したものには十字架が描かれるのでそこからちなんでいると思います。(論拠がないため推測の範囲内ですが、、、)

このようにアトリビュートを考察するとたくさんの事柄が関連していることがわかります。是非他にもアトリビュートを探してみて、絵の観賞を深めていってください。最後まで読んでくださりまして、ありがとうございました。

アトリビュートのほかに似たようなもので象徴(シンボル)や寓意(アレゴリー)があります。気になる方はぜひそちらもご覧ください。