油絵具の黒の種類と違い。アイボリーブラック、ランプブラック、マースブラックなど

みなさんこんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。

今回は油絵具に使用される黒について紹介しようと思います。

黒って結構同じように見えますが、どんな種類があってどんな違いがあるのか。

いまいち違いがよく分かりませんよね。

そこで今回はアイボリーブラック、ランプブラック、マースブラックの三種類(とそのほか)について解説していこうと思います。

私は油絵具で絵を描いていますが、他の絵の具(水彩絵具やアクリル絵具)でも参考になるので是非ご覧ください。

それではよろしくお願いします。

油絵具に使われる黒の違い

絵の具に使われる黒の違いは、絵具に含まれている顔料の違いがあります。

顔料とは色付きの小さい粒だと想像してください。

その顔料が違うことで、色味や、特徴が違うようになるわけですね。

ではそれぞれの黒の特徴を見ていきましょう。

油絵具の黒①:アイボリーブラック

使用されている顔料

油絵具に使用されるアイボリーブラックはもともと象牙(ぞうげ:英語でアイボリー)や、象牙の残りかす(象牙の彫刻や削りクズなど)を高温で蒸し焼きにしてできたものが、このアイボリーブラックです。

現在では象牙などがワシントン条約などで制限されているので、かわりに骨を焼いたものが使用されています。

骨(英語でボーン)を使用しているので、ボーンブラックとも呼ばれる場合があります。

顔料名としてはC.I.Name「PBk9」が使用されています。

特徴

アイボリーブラックの特徴は、

  • 温かみのある黒
  • 透明感のある黒

があげられます。

アイボリーブラックをホワイトと混ぜてみると、若干温かみのあるグレーができます。

また、透明感があるので、色を混ぜたときに相手を黒くしすぎないという特徴もあります。

油絵具の黒②:ランプブラック

使用されている顔料

油絵具に使用されるランプブラックはランプで油などを燃やしたときにランプから出てくる煤(すす)を集めてできた顔料です。

習字とかに使用する墨とかも、ナタネ油やツバキ油などの植物性の油を燃やした煤や

石油や石炭などの鉱物性の油を燃やした後の煤を膠と混ぜて使用しているので広い意味でランプブラックを使用したと言えます。

使用されている顔料はC.I.Name「PBk7」です。

特徴

ランプブラックを油絵具に使用すると

  • 不透明な黒
  • 冷たい黒

の二つの特徴があります。

ランプブラックは粒の大きさがかなり小さいので、下を隠す力(着色力)が強く、不透明な黒です。

また、アイボリーブラックと比べると、少し青みがかった黒色になります。

油絵具の黒③:マースブラック・オキサイドブラック

使用されている顔料

油絵具に使用されるマースブラックは酸化させた鉄(酸化鉄)を使用しています。

鉄の粉を高温で焼くと黒くなるんですね。

C.I.Nameとしては「PBk11」と表記されます。

マース(マルス)ブラックの「マース」は火星のことですが、

これは火星の表面が酸化鉄に覆われていることから、火星=酸化鉄という公式になり、

マース=酸化鉄が使われているよということを意味しています。

このことから黒色の酸化鉄は「マースブラック」という色の名前になりました。

また、オキサイドブラックという名前で絵の具が売られている場合がありますが、

これは酸化したもの(鉄)、つまりoxide(オキサイド)という英語から来ています。

特徴

マースブラックを油絵具にした場合、

  • 透明度が一番高い

ことがあげられます。

マースブラックは黒の中では、一番透明度が高いので、絵のニュアンスを調整するときに使用すると良いでしょう。

また、他の色と混ぜて色の明明るさの度合い(明度)を落とすのに扱いやすいです。

陰の色を出したい時などに使用すると、効果的です。

ピーチブラック

使用されている顔料

油絵具を使っていると、「ピーチブラック」という色の黒もあります。

これは昔、桃(ピーチ)の種を焼いて顔料にしたことからこの名前が由来しています。

現在では縮合アニリンという合祀した顔料を使用しています。

C.I.Nameは「PBk1」です。

特徴

ピーチブラックの特徴として

  • 最も黒い

という特徴があります。

ホルベインさんの「油絵具のブラック」というページでは

色は暖色と寒色の中間調。漆黒度が高く、見た目がいちばん黒いブラックです。

ホルベイン公式サイト「色材の解剖学⑭ 油絵具のブラック」より引用

と記載されています。

実際のところ、油絵具などにすると、黒系はやや青みを感じます。

見た目がいちばん黒いブラックですが、グリザイユ画法で用いられることもあります。

グリザイユ画法で絵を描く際、シルバーホワイトやチタニウムホワイトと混ぜて、グレーを作り、モノクロの写真を描くように使用します。

まとめ

油絵具に使用される黒色の主な種類は、アイボリーブラック、ランプブラック、マースブラック、そしてピーチブラックです。違いは以下の通りです。

絵の具名色味透明性
アイボリーブラック温かみのある黒透明感がある
ランプブラック青みのある冷たい黒不透明
マースブラック青みのある冷たい黒一番透明感がある
ピーチブラック最も黒いやや不透明
絵の具にした場合の色味・透明感

アイボリーブラックは、油絵具にすると温かく、半透明な色。

ランプブラックは、冷たく、不透明な色。

マースブラックは、最も透明感が高い色。

ピーチブラックは、最も黒い黒絵の具です。

最後までご覧いただきありがとうございました。

油絵具っていったい何の成分が含まれているのか。

顔料?乾性油?そんな呪文を解消する記事を下で紹介しています。

ちょっとコラムで「他の黒色油絵具」も紹介しています。

そちらには「ブルーブラック」や「ジェットブラック」、「カーボンブラック」やについて紹介したいと思います。

他の黒色絵の具

ブルーブラック

ホルベイン社から販売されているブルーブラックは、ランプブラック(PBk7)に青色の絵の具であるウルトラマリン(PB29)を混ぜた色のことです。

青色を混ぜることで、青みが強くなるので、黒が引き立つようになっています。

ジェットブラック

アクリルガッシュなどで「ジェットブラック」として販売されているブラックは、

アニリンブラック、つまりピーチブラックと同じ原料である縮合アニリン(PBk1)を使用しています。

カーボンブラック

カーボンブラックは「PBk7」つまり、ランプブラックと同じ顔料が使われています。