こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。
今回はアクリル絵具について紹介していきます。最近絵画でよく見る「アクリル」という単語ですが、一体水彩絵具や油彩絵具とどう違うのでしょうか。
そこの違いを解明しながら作品も紹介していこうと思います。それではよろしくお願いします。
アクリル絵具とは
アクリル絵具とは顔料をアクリル樹脂と混ぜた絵具であると言えます。
絵具は色の粒(顔料)と接着剤(展色剤)を足したものです。この展色剤が何かによって絵具の名前が変わります。
アクリル絵具は展色剤がアクリル樹脂だからアクリル絵具なのです。
また水彩絵具の場合は、展色剤が水に溶けるアラビアゴムになります。水彩絵具については別の記事で紹介しています。そちらの是非ご覧ください。
ではアクリル絵具にはどのような特徴があるのでしょうか。
アクリル絵具の特徴
アクリル絵具の長所
- 速乾性に優れる
- 安全に使用できる
- 臭いがない
- 色が鮮やかになる
- 耐久性が高い
というのが挙げられます。
アクリル絵具はアクリル絵具に含まれる水分が蒸発すると乾燥しますので、とても早く乾燥します。また薄めるときには水を使うので環境にもやさしく安全です。
油彩絵具だと乾性油や揮発性油など臭いがきついものを使用するので部屋が一つ必要になりますが、アクリル絵具だとその心配がないので、部屋が制限されていたりペットや子供のいる方も安心して手軽に挑戦できます。
アクリル樹脂の特性として紫外線を吸収することができ、乾燥すると耐水性にもなるので、頑丈で屋外にも使用できます。
また、アクリル樹脂は透明になるため、顔料そのままの色が出るので鮮やかな色合いになります。
さらに布や木、石などどんなところにも描くことが出来ます。
アクリル絵具の短所
ここまで言うと良いことずくめに聞こえますが、長所が短所になる場合があります。
- 早く乾いてしまう
- 剥がれ落ちなくなってしまう
- 絵が軽く見える
- 歴史が浅い
というものが挙げられます。
早く乾いてしまうのでゆっくり考えたりすることはできないです。さらにグラデーションを作るのも難しいです。
アクリル絵具は一度乾燥してしまうと、強力な溶剤でない限りなかなか落ちません。私もTシャツに誤ってアクリル絵具を付けてしまい取れなくなってしまった経験があります。
アクリル絵具の場合、顔料そのままの鮮やかな色になる一方、色に深みを出し辛いです。油彩絵具の場合、顔料の色に加えて油の琥珀色が混ざり、深みのある色になります。
これは絵を描く方の技量次第になりますし、技法も様々ありますので、カバーすることは可能です。
アクリル絵具は21世紀の絵具と言われ、生まれたばかりの絵具です。
伝統的に使用されている油彩絵具、水彩絵具、テンペラ絵具、日本画などは絵画を修復する技術も発達しているため、補修は可能ですが、アクリル絵具はどのような劣化があるのかまだ不明なので修復技術がないのが現状です。
また劣化の仕方やどれくらいの期間で劣化し始めるのかも不明なので、不安要素が残る絵具でもあります。
これらのことに注意しながらアクリル絵具を使用すると良いでしょう。
アクリル絵具の歴史
アクリル絵具の歴史は非常に浅く1901年の研究がアクリル絵具発明のきっかけになりました。
1901年、ドイツの化学者オットー・レームがアクリル酸の誘導体から合成樹脂ができることを発見します。
この合成樹脂はガラスを何枚か張り合わせるための接着剤として用いられ、強化ガラスとして航空機の窓に使用されるようになりました。
しかしこのアクリル樹脂の欠点として高価すぎることでした。
絵具に用いようとするには、費用の面で不可能だったのです。
1953年、従来の何分の一かのコストでアクリル樹脂が合成できる技術が発展し、大衆化しました。
繊維や、照明器具、塗料などの身近な製品に用いられ、絵具にも使用されるようになりました。
1957年頃からアメリカで作品が制作され始め、60年代末には一般的になって行きました。
アクションペインティングや、ドリッピング、シルクスクリーンなど新しい技術や絵画技法も発明されました。
アクリル絵具で有名な画家と作品
アンディ・ウォーホール
アンディ・ウォーホールはアメリカの画家(芸術家・デザイナー)です。彼はポップアートを語る上で欠かせない巨匠です。
彼の作品は大衆商品のパッケージデザインや、著名人の肖像画をシルクスクリーンという版画技術で表現した芸術家です。
この作品に使用されているのはキャンベル社のスープ缶をモチーフに描かれています。しかも何枚も何枚もシルクスクリーンで複製されています。
他にも毛沢東の肖像画に色を付けた作品もあります。
彼の作品は芸術の暗黙の了解であったオリジナル性や、ある意味崇高な存在であることを否定し、アートの幅を広げました。
ロイ・リキテンシュタイン
ロイ・リキテンシュタインもアメリカを代表するポップアートの巨匠のひとりです。(彼は油彩と当時珍しかったアクリル絵具「マグナ」を使用しています。)
彼はアメリカンコミックのコマの1つを拡大して、それを模写する表現をしました。
『ヘアリボンの少女』では、ただ単純に印刷拡大したように見えますが、天一つ一つを筆で描いているという恐ろしい集中力を必要とする作業をしています。
他にも漫画の擬音やセリフなども忠実に模写し、それを作品としています。
ジャクソン・ポロック
ジャクソン・ポロックはドリッピングと呼ばれる技法を編み出した画家です。
ドリッピングは画面に一切触れることなく、絵具をまき散らしたり流したりして描く方法で、『Number 17A』でも見られるように偶然を重ねた抽象画になります。
この作品は約2億ドル(200億円以上)で取引されたそうです。
それぞれの作品にみられるように鮮やかな色彩をアクリル絵具は表現することが出来ます。
まとめ
アクリル絵具の歴史は浅いもののその密度は濃く、画家たちを虜にしてやまない絵具です。
まだまだ新しい表現が出来そうなアクリル絵具を是非チャレンジしてみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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