ジェッソの違いと種類を紹介・解説。

画材屋さんで見かける「ジェッソ」という種類の画材。

一体何が違うのかいまいちわかりませんよね。

しかも、専門書を開くと

吸収性や、半吸収性、非吸収性などの謎の用語。

どんな素材が使われていたり

どんな効果があるのかも

いまいちピンときません。

そこで今回はそんなジェッソを

徹底的にかつ分かりやすく紹介・解説しようと思います。

それではよろしくお願いします。

そもそもジェッソ(Gesso)って何?

ジェッソとはキャンバスやパネルに

塗る不透明の白色塗料のことです。

最近だと市販のキャンバスにすでに塗られていることが多いです。

ジェッソの語源であるGessoは

もともとイタリア語で石膏(せっこう)

を意味していました。

イタリアでは石膏に膠(にかわ)を混ぜて

それを木の板に塗って、その上に絵を描いていた。

という歴史があるんですね。

これが元祖ジェッソだと考えられます。

【膠】にかわ

動物の皮や骨などを水で煮て、そのエキスを濃縮・冷却し

固めて作ったもの。

伝統的に接着剤として使われることが多い。

ジェッソをキャンバスやパネルに塗ることで

油絵具で絵を描くときにさまざまな効果を

得ることができます。

ジェッソの違いと種類

そんなジェッソですが、

油絵具の油をどれくらい吸うのかによって

おおきく3つの種類に分けることができます。

それぞれの長所や短所、使われている素材の種類を

解説しようと思います。

吸収性のジェッソ

ジェッソの特徴

まず一つ目、吸収性の下地のジェッソです。

長所

この種類にあたるジェッソは

油絵具の油をたくさん吸うので、

早く乾燥し、艶消しの画面になりやすいです。

また、油絵具の油(乾性油)がしみこみやすい

ということは油絵具の食いつきがよくなります。

そして、全体的に明るい色調になりやすいです。

短所

一方で、接着剤としての役割をはたす

油も吸ってしまうので、吸収性を調整する必要があります。

その方法として、

有色下地(インプリマトゥーラ)と呼ばれる

調整方法が挙げられます。

また、キャンバスなどの柔らかい素材を

巻こうとすると簡単にひび割れてしまうので

支持体は綿布を貼ったパネルがおすすめです。

実際私も吸収性のジェッソを使用する場合

シナパネルに綿布を貼ったものを使用します。

ジェッソの素材の種類

吸収性のジェッソは、素材によって

白亜地(はくあじ)、石膏地(せっこうじ)

の2つの種類があります。

白亜地

白亜地は白亜と膠を混ぜて作られた塗料(ジェッソ)のことです。

【白亜】はくあ

白亜は貝殻や化石などが風化して、

固まった白い石灰岩の一種。

それを砕いて白い粉末にしたものを膠に混ぜます。

その白亜のジェッソを下地に使ったものを白亜地と言います。

石膏地

石膏地は石膏と膠を混ぜて作られた塗料(ジェッソ)のことです。

その石膏のジェッソを下地に使ったものを石膏地と言います。

【石膏】せっこう

石膏は硫酸カルシウムを主成分とする鉱物です。

最近では

ただ白亜地や石膏地は自分で作るしかなく、

かなり面倒なジェッソです。

(夏とか冬で膠の粘度の調整をしたり

ダマができないように工夫したりしないといけないので

慣れが必要です)

そこで最近では画材メーカーが

膠の代わりにアクリル樹脂を使った

アブソルバンやμ(ミュー)グランド

などお手軽なジェッソを販売しています。

アブソルバンはホルベイン社から

μ(ミュー)グランドは文房堂から

発売されています。

どちらも白亜地や石膏地などと同じような吸収性を持っています。

どちらも膠のかわりにアクリル樹脂という

人工の樹脂を接着剤にしているので

手間がかからず、扱いやすいです。

アブソルバン 「ホルベイン柑子木オンラインショップ」から引用
画材通販専門店 画材ショップ楽屋から引用

半吸収性のジェッソ

ジェッソの特徴

二つ目のジェッソである半吸収性のジェッソは

最初に紹介した吸収性のジェッソよりも

油絵具の油を吸う量が少ないです。

長所・短所

なので、油絵具が画面に対して

ほどよい食いつきをしてくれます。

吸収性のジェッソとあとで紹介する

非吸収性ジェッソと間の性質をしています。

長所と短所がほとんど目立たずバランスの良い下地です。

油絵具も使えますし、

テンペラ絵具との併用もできます。

ジェッソの素材の種類

アクリル樹脂

アクリル樹脂を使った白色の塗料(ジェッソ)です。

販売されているものではホルベイン社から

出されている半吸収性のジェッソ

「ジェッソ」が有名です。

ホルベイン 公式オンラインショップから引用

猫にタマ、犬にポチと付けるくらい

わかりやすい名前ですね。

非常にポピュラーなので、

大体の画材屋さんでは販売されているのではないでしょうか。

卵と油

卵と油に炭酸カルシウム(白亜)を混ぜた塗料(ジェッソ)です。

なんだか料理ができそうな素材名ですが、

れっきとした半吸収性のジェッソです。

これも白亜地や石膏地を越えるくらい

制作するのが大変なジェッソです。

そのため、上で紹介したアクリル樹脂の

半吸収性のジェッソが

主流となっていると考えられます。

非吸収性下地のジェッソ

ジェッソの特徴

最後は非吸収性のジェッソです。

長所

非吸収性のジェッソの特徴は

油絵と最も相性がいいジェッソです。

油絵具の油を吸わないため艶が出ます。

また、失敗したりしても吸収されないので

布やティッシュなどでぬぐい取ることができます。

そして柔軟性もあるのでキャンバスを巻いても

ひび割れがしにくいことが挙げられます。

短所

一方短所は

吸い込みが少ないため、半吸収性、吸収性のジェッソと比べると

画面が暗く(重く)なりやすいです。

また、日本画のような艶消しの画面になりずらいことも挙げられます。

また非吸収性のジェッソは油性の素材を使うので

水彩絵具やアクリル絵具などの水性絵具は剥離することがあるので

それらは使わないようにしましょう。

ジェッソの素材の種類

油(乾性油)

油絵具の接着剤である乾性油と

チタニウムホワイト(PW6)やシルバーホワイト(PW1)

などの白色顔料を混ぜたものが主流です。

乾燥時間が非常に長く(二週間程度)かかります。

乾性油の代わりにアルキド樹脂というものをつかう

非吸収性のジェッソもあります。

市販されているもの

市販されているものでは

ホルベイン社でクイックベース

というものがあります。

リンシードオイルという乾性油を使っているので

簡単に非吸収性のキャンバスやパネルにすることができます。

ホルベイン公式ホームページから引用

今では、白色のほかにも

緑やグレー、茶色など

様々な色のクイックベースがあります。

まとめ

ジェッソとはキャンバスやパネルなどの支持体の特性を

変化させるための白色の塗料のことです。

絵の具を吸収する量によって

吸収性、半吸収性、非吸収性のジェッソの三つに分けることが

できます。

それらの違いは下の表でまとめます。

吸収性半吸収性非吸収性
吸収量高い中くらい低い
性質水性半油性油性
画面への効果明るくする普通暗くする
柔軟性ひび割れやすい中間ひび割れにくい
乾燥期間3日ほど3~1週間ほど2週間ほど

最後までご覧いただきありがとうございました。

他にも油絵具をもっと知りたい。

絵が上手くなりたい

という方には下の記事がおすすめです。

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