こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。今回は油彩絵具について解説していこうと思います。
油彩画と言えば誰しもが見たことのある絵画にたいてい使用されています。
有名な作品も大体油彩画です。
しかし、それらに使われている油彩絵具っていったい何か、それを詳しく解説していきます。
それではよろしくお願いいたします。
油彩絵具って何?
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/761px-Giovanni_Bellini_-_Ritratto_del_Doge_Leonardo_Loredan-722x1024.jpg)
油彩絵具は簡単に言えば、
乾性油を主に使用した接着剤と、顔料を練り合わせた絵具
と言えます。顔料については別記事で紹介していますのでそちらをご覧ください。
つまり乾性油と言う油を使用しているから油彩絵具と言うことになるのです。
では油彩絵具にはどのような特徴があるのでしょうか。長所と短所を絡めながら紹介していきます。
油彩絵具の特徴
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2020/12/olive-oil-1433506_640.jpg)
固まるのがゆっくりとしている
油彩絵具は他の絵具と違い、酸素を取り込むことによって固まる「酸化重合」と言うもので画面に定着します。この反応は非常にゆっくりとしていて、何年も何十年もかけて固化していきます。
肉痩せがなく、厚塗りができる
油彩絵具は水を使用していないので、アクリル絵具のように肉痩せが起こりません。そのため、厚塗りをしたときにもそのままの厚さで固まってくれます。
しかし、厚塗りをすると、環境にもよりますが、十数年後にボロボロと落ちてしまいます。ゴッホの作品などはボロボロと落ちてしまい、今はアクリル絵具で補修されています。
固まる前と固まった後で色の差がほとんどない
アクリル絵具や水彩絵の具などの水を使用した絵具は、「濡れ色」と言って若干暗い色の状態から、乾燥すると明るい色になります。
油彩絵具の場合、ほとんど色が変わらず乾燥してくれるので、描く人にとっては描きやすいと言えるでしょう。
丈夫な画面が作れる
油彩絵具は14世紀の作品も残っているほど、実証された高い耐久性があります。また、描き方によっては高級感のある光沢も得ることができます。
透明感と深みのある色
油彩絵具は肉やせをしないまま固まるので
顔料が油の中で分散します。
なので、透明なセロファンのような透明感を表現することもできます。
また、それを重ねて色に深みが出るので
絵に深みがでます。
油彩絵具の成分
油彩絵具の成分には、主に二つの油と樹脂ワニスが使用されています。
乾性油(接着剤)
油彩絵具のバインダーの主成分です。
乾性油は空気に放置すると、空気中の酸素と化合を起こし、固まる酸化重合と言う化学変化を起こします。
これを利用し、油彩絵具はキャンバスや木の板に接着するのです。
よく画材屋さんでは亜麻仁油(リンシードオイル)・ポピーオイル・サフラワーオイルなどが販売されています。(それぞれの処方についてはマニアックなため別記事にて記載)
揮発性油(蒸発するうすめ液)
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/bottle-2032980_640.jpg)
名前そのまま揮発する油です。アクリル絵具で言えば水ですし、ペンキなどでは薄め液と同じ役割をします。
揮発性油は油彩絵具の粘度や濃度を調整し、伸びを良くしたり油彩絵具の固化を早くしたりする効果があります。
しかし、揮発性油は時間の経過とともに揮発してしまい、接着成分が含まれていません。。乾性油よりも多く入れないのが鉄則です。
テレピンやペトロールなどが揮発性油に分類されます。
樹脂ワニス(接着剤の調整をする)
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/resin.jpg)
基本的に油彩絵具は乾性油と揮発性油でできていますが、それを補助する目的で樹脂を添加することがあります。
樹脂を添加することで粘り具合やつや、乾燥性、耐久性を調整することが出来ます。
例えば、ダンマル樹脂を添加すると乾燥が遅い油彩絵具の表面的な乾燥を早めることができ、素早い作業ができるようになります。
その他
他にも補助剤として、乾燥を早める乾燥促進剤なども販売されています。
油彩絵具の歴史
最古の記録
顔料と乾性油を混ぜた絵具を使用したという点では
最古の記録としてバーミヤンの壁画とされています。
油彩画技法の確立
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/350px-Portrait_of_a_Man_by_Jan_van_Eyck-small.jpg)
また、ヨーロッパでは今の平面に描く油彩画が確立したのは14世紀頃とされています。
ヤン・ファン・エイク(とその兄)が確立したと言われています。
この時の油彩絵具は、画家(またはその弟子)が乾性油と
土などから採取した天然の顔料(と一部の合成顔料)を手で練っていて
とろとろの油彩絵具でした。
油彩画の革命
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/295px-Claude_Monet_1899_Nadar-1.jpg)
そして油彩絵具に革命が起きたのは19世紀頃です。
この時、あらゆるものが機械で大量生産される
産業革命が起きました。
そして、油彩絵具の生産により市民でも手ごろに変えるようになりました。
合成顔料などもたくさん開発されて、色も鮮やかになってきました。
これによって屋外でも絵を描くことができるようになり
色鮮やかなチューブ式の絵具ができました。
そしてクロード・モネを代表する「印象派」が誕生することができたと言えるでしょう。
有名な油彩画の作品と作者
ヤン・ファン・エイク
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/ヤン・ファン・エイク.jpg)
ヤン・ファン・エイクは14世紀頃に活躍した油彩絵具の技法の確立者として有名です。
彼の作品はまさに超絶細密と言えます。
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/351px-Van_Eyck_-_Arnolfini_Portrait-2-1.jpg)
代表作『アルノルフィーニ夫妻像』をよく見てみると
鏡に描かれている絵も絵かれていたり
ベッドの木彫りも細かく描かれています。
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/351px-Van_Eyck_-_Arnolfini_Portrait-2.jpg)
ドミニク・アングル
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/ドミニク・アングル.jpg)
ドミニク・アングルは19世紀を代表するフランスの画家です。
彼の代表作である『グランド・オダリスク』では、肌のきめ細かさ、布の質感や金属の光沢感など
存在感のある美しい作風です。
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/640px-Jean_Auguste_Dominique_Ingres_005.jpg)
クロード・モネ
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/クロード・モネ.jpg)
クロード・モネは印象派を代表するフランスの画家です。
彼の代表作『印象・日の出』は、印象派のシンボルと言えます。
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/619px-Monet_-_Impression_Sunrise.jpg)
また、『日傘を差す女』では鮮やかで軽快なタッチが見て取れます。
![](https://0plusart.com/wp-content/uploads/2022/07/390px-Claude_Monet_011.jpg)
最後までご覧いただきありがとうございました。
他にもおすすめの記事がありますので、良ければそちらもご覧ください。
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