西洋絵画の裏メッセージ。象徴(シンボル)と寓意(アレゴリー)とは

西洋絵画の裏メッセージ。象徴(シンボル)と寓意(アレゴリー)とは

こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。

皆さんは美術作品を見てみると、犬がいたり猫がいたり、幻想的な一角獣や勇猛なライオンを見たことがありませんか?

それらを見たとき、「猫だ可愛い~」と思ったり「毛並みが細かく表現されていてすごい」など様々なことを思います。もちろん絵をそのように鑑賞しても十分楽しめますが、さらに楽しむ方法があります。

実は、絵画に隠された裏のメッセージを読み解くことによって、知っている人だけが読み解くことができる「知的な世界」が広がっているのです。

それを読み解くために象徴(シンボル)と寓意(アレゴリー)について紹介していこうと思います。できるだけわかりやすく、かみ砕いて説明しますので、よろしくお願いします。

象徴(シンボル)とは

象徴(シンボル)とは何でしょうか。広辞苑によると

本来かかわりのない2つのもの(具体的なものと抽象的なもの)を何らかの類似性をもとに関連図ける作用。

岩波書店『岩波書店』第6版「象徴」より引用

と言われています。つまり、目に見えないものを目に見えるもの(色や生物、動作など)に置き替えたものであるということです。

日本では、絵を見たときに「これはとても素晴らしい」や「この色合いが好き」など絵を心で感じる鑑賞(感覚的鑑賞)をする方もいますが

西洋ではそれに加え、伝統的にその絵が表す意味を、描かれている内容で考え鑑賞(知的鑑賞)することをしています。

例えば、赤いバラは愛の象徴、頭蓋骨があれば死を意味するなどが挙げられます。

つまり鑑賞に共通の約束事があります。それが象徴(シンボル)であり、寓意(アレゴリー)なのです。

なので、西洋絵画を見るときに、その裏に隠されたメッセージを読み解くと、より深く鑑賞することが出来ます。

なぜ象徴や寓意があるのか

象徴や寓意がどうして発達したのか。それは二つの理由があります。

誰にでも伝わりやすくするため

一つ目の理由は、誰にでも伝わりやすくするためです。特に大きな役割を担ったのが宗教でした。

中世ヨーロッパでは大半の人が文字を読み書きすることが出来ませんでした。

さらに聖書はラテン語と言われる難解な文字を使っていたため、一部の聖職者にしか読むことが出来ませんでした。

ラテン語の聖書。何が何だかわかりません。

そこで聖書の内容を伝えるため、絵というものを使って広めることにしました。その時、一目でわかるように象徴や寓意を入れ込むことで、誰にでも伝わるようにしたのです。

例えば聖母マリアを描く場合、女性を描いていてもいまいちピンときません。

そこで、赤い服、青いマント、さらに赤ちゃん(幼子イエス)を抱いている女性を何度も描くことで、聖母マリア、と認識できるようになるのです。

典型的な聖母マリア像。すべてのものを救ってくださりそうです。

細かく言えばアトリビュートというものですが、気になる方は別記事にてご覧ください。

抽象的なものを具体的に表現するため

二つ目の理由は、抽象的な表現をするためです。

聖書の中には道徳(正義、節制、愛など)や罪(傲慢、怠惰、強欲など)、つまり目に見えない抽象的な概念を具体的な表現にする必要があります。

それを担ったのが象徴や寓意などの置き換えの方法なのです。

よく漫画やアニメのキャラクターで正義の味方、強欲なボス、傲慢な人、など服装や仕草で見分けることが出来ますが、あれも象徴や寓意を使用した良い例であると言えるでしょう。

正義の味方だと一瞬でわかります。

このように象徴や寓意は、最初は宗教を広めことから始まり、現在では大衆文化、現代アートなどがその流れを汲んでいます。

まとめ

象徴や寓意と聞くとなんだか難しいように感じますが、絵画だけではなく、日本でも文化として自然に取り入れられている便利な表現方法です。

絵画に用いられる具体的な寓意画については別記事にて記載しています。そちらも是非ご覧ください。

代表的な象徴の例として犬を取り上げています。なぜか絵画に犬がいる。実は隠された象徴・寓意があるんです。別記事にて詳しく解説しています。