自分で美術展や個展を開くときって具体的にどんなことをしていいのかわからない。
個展の開き方が知りたい。
美術展を開きたいけど何から手を付ければいいの?
展覧会をやるのは初めてで不安
展覧会をやってみたけど、もっといい方法はないのか。
というかたに向けて、他の人の美術展の展覧会の企画や自分で展覧会の企画をしている私が、これはいいぞ!展覧会が上手くいった!という方法や
これはやっちゃった…という失敗談をマニュアルという形で紹介・解説していこうと思います。
題して「これで安心!展覧会の開き方マニュアル」を公開します。
この記事で
美術展の展覧会の方法が分かった
不安が少しでも解消できた
とりあえず展覧会やってみよう!
個展の開き方が分かった!
というふうに思ってくだされば幸いです。
今回は美術展の流れに加えて、
実際にできるようにチェックリストもあるので、それを参考に美術の展覧会を開いてみてくださいね。
それでは展覧会を開催する準備をしていきましょう。
個展や展覧会開催までの3ステップ
そもそも個展や展覧会を開く方法を解説する前に、
展覧会とはどういう流れで進むのでしょうか。
大まかに3つのステップがあります。
1つ目は「企画」
2つ目は「準備」
3つ目は「開催」
です。
企画
企画は展覧会のコンセプトや方向性、展覧会名を決めるものです。
骨を作る段階ですね。
グループ展や大規模な展覧会だと特に重要になってくると思います。
また展覧会の開きたい会場や期間、必要そうなものなどを考えておくと良いでしょう。
私の場合、A4のコピー用紙一枚で企画書を作り、準備段階へ進んでいます。
くわしくは記事の後半で解説します。
準備
展覧会本番に向けて事前の準備をする段階です。
「段取り八分、仕事二分」
ということわざがある様に、準備はとても大切です。
企画を肉付けしていく段階です。
展覧会の準備は全体の80%(下手をすると90%)を占める非常に重要なステップです。
ここでは準備についてくわしく解説していきます。
会期のだいたい一週間くらい前には最低すべての準備を終わらせましょう。
開催
展覧会の一番目立つところです。
お客様と触れ合う機会が多く、
自分の作品や自分自身をアピールする重要な機会ですね。
会期後は後片付けや関係者へのお礼。
お客様のアフターフォローなど様々なことがあります。
展覧会の大まかな流れについてはこれくらいにして、
いよいよ展覧会の開き方を解説していきます。
展覧会の企画と準備をしよう
ではいまから皆さんは展覧会を開こうとします。
展覧会を開くにあたって大体6カ月くらい間に行動し始めると余裕をもって展覧会に挑めます。
6か月後を日数にすると約180日ですね。
この期間で展覧会の準備をしていこうと思います。
最初に言っておきますが、5カ月近く(150日間)は展覧会の準備期間になります。
残りの30日は企画ともろもろの準備になります。
0.展覧会を企画する
展覧会を企画しましょう。
展覧会を企画するときには企画書を簡単でもいいので作っておくと便利です。
途中で後何をすればいいのかの道しるべにもなります。
企画の段階ではアバウトでいいので、とりあえずこういう方向で進んでいこうという感じにしましょう。
考えすぎて先に進まないのはもったいないので。
下には企画の段階できめておくものをのせておきます。
□ | 展覧会名 |
□ | 展覧会開催日(何日か、何月くらいにするのかなどアバウトでOK) |
□ | 展覧会開催場所(市内や都市部などアバウトでOK) |
□ | 作品点数(だいたいの作品数でOK) |
次の準備段階で、細かい場所や展覧会開催日を決めていきましょう。
グループ展などになると、「コンセプトはどうするか」「規格・ルールはどうするのか」など複雑になりますが、
今回は個展ということで話を進めます。
1.展覧する作品を選ぶ
展覧会を開くならまずは作品を選びます。展覧会の要ですね。
作品を選ぶ際には作品数や作品の大きさ、額装の有無などを把握しておきます。
油絵や日本画などの平面作品に額縁がない場合は、吊るす金具を作品に付けておくようにしましょう。
額縁がある場合は、金具や紐がしっかりと額縁についているか確認しましょう。
そうすると次の会場を決める際にイメージしやすいです。
□ | 作品は何点になるのか |
□ | 作品の大きさはどれくらいなのか |
□ | 作品の種類は何なのか |
□ | 作品には額縁はあるのか、ないのか。ない場合会場に設置するための吊るし金具などを付けましょう。 |
作品が決められない。まだできていない。
というかたは、先に会場を決めてもよいでしょう。
私の場合、一年前に展覧会場が取れそうな場合は、会場・会期を先に決めています。
2.会場・会期を決める
作品が決まったらいよいよ会場。会期を決めていきます。
会場を決めるときには時間、人、場所、お金が重要になってきます。
少し長い章なので、区切って説明していきます。
時間
まずは展覧会を開く期間を決めましょう。
いわゆる会期と呼ばれるものです。
展覧会は1週間程度あるのが理想的ですが、
三日程度でも良いです。
そのときは、日本で働いている人の休みが多い
土曜日か日曜日を一日入れておくと展覧会に多くの集客が見込めます。
次に会場の予約方法です。
会場を予約する場合、遅くとも半年前に予約をしましょう。
よい会場だとすぐに埋まってしまい、
直前だと取れなくなってしまう場合があります。
(会場によっては半年前ではなく一カ月前しか予約が取れないなどもあります。
臨機応変に対応しましょう。)
会場の開いている枠を会場関係者に質問しましょう。
会場によってはネットで確認することができるので、
可能なら事前に確認するのもよいです。
一カ月前や一週間前など直前に予約をしてしまうと
準備にバタバタしてしまい、会場の関係者にも自分もよい思いをしません。
ゆとりをもって行動すると展覧会の準備も楽しくできます。
後で説明する「展覧会の事前準備」も半年ほどの設定で話を進めています。
会期が決まったら、今度は搬入日と搬出日を決めていきましょう。
ほとんどの場合、会期が決まれば、会場担当者から
「〇月〇日の何時から何時までが搬入日です。」
「搬出日は何月何日の何時から何時までです。」
と教えてくれるので忘れないようにメモしましょう。
一例ですが、搬入日は会期の前日、
搬出日は展覧会最終日の会期時間を1時間ほど早く終わらせて片付けをする。
という形があります。もしわからなかった場合は、質問しましょう。
□ | 会期はどれくらいの期間にするのか |
□ | 時間は何時から何時まで? |
□ | 会期の半年以上前に予約したか |
□ | 搬入日・搬出日の日付と時間はいつか |
人
展覧会期中に会場には常に在廊しないといけないのか、
会場の人がいつでもいてくれるのかは質問してみましょう。
これを忘れると後で
「会場に人がいないなら展覧会はできないよ」
となってしまい、最悪展覧会を中止するトラブルになりかねません。
電話で質問するのもいいですが、可能なら直接会って質問するのが良いです。
担当者の印象が良い、または自分と考え方・感覚が合いそう
なども確認できるのでオススメです。
直接会う際は電話でアポイントメントを取りましょう。
同時に、会場の雰囲気も確認できます。
□ | 担当者が在廊してくれるのか。またはこちらが在廊するのか。 |
□ | 担当者とは気が合いそうか。または合わせることができるか。 |
□ | 会場の雰囲気は良いか |
余談ですが、在廊ができるときには在廊をしてみましょう。
展覧会に来てくれる方の様子が分かり、意外な人とつながるよいきっかけになります。
場所
場所というのは立地条件、設備の充実度という二つの意味があります。
せっかく時間も空いていて、人もよさそうなのに、立地が悪い。
立地が悪いとお客様が作品を見に行くことができない。
これでは本末転倒です。
立地条件の良し悪しは都市部(都会)や地方(田舎)で異なりますが、
都市部の場合、公共交通機関の近くにあるのか(いわゆる駅チカ)、徒歩だとしたら、わかりやすくたどり着ける道なのかを確認しましょう。
地方の場合、公共交通機関に加えて車を持っている方が都市部と比べて多いので、
駐車場がたくさんあるのか、
車が停めやすいのかなども確認しておきましょう。
一度自宅から会場まで行ってみましょう。
立地条件が良いと、行きやすく、悪いと自分も行きづらさを感じます。
次に設備の充実度についてです。
美術館のように、最適な湿度・温度が保たれていて、平面の絵画作品を架けるためのピクチャーレールやワイヤー、立体の彫刻作品を置けるための台やガラスケースがあるのが一番の理想です。
会場によってはピクチャーレールがあったとしても、ワイヤーの数が少なく、作品を吊るすことができない。
そもそもピクチャーレールがなくて板(有孔ボード)を立てて、そこにフックで作品をひっかける。
壁には穴や傷をつけてほしくないから、キャプションをテープで留めてほしい。
直射日光が作品に当たる。
展覧会場が広すぎて、展覧したい作品が小さくバランスが悪い。
作品を照らすライトがない。など様々な環境や設備の過不足、条件があります。
なので、自分の作品数・雰囲気と照らし合わせて、会場をあきらめるのか、妥協するのか、少し手を加えるのか。
作品数を施設に合わせて減らしたり、増やしたりします。
もし可能なら、ワイヤーやフック、ガラスケースなどを自前で用意し、それらを使用していいか会場担当者へ確認しましょう。
自分で補助できるものは会場に合わせて補助していきましょう。
□ | お客様がたどり着きやすい立地か。 |
□ | 会場の施設・備品は、作品を搬入するだけで設営は完了できるか。 |
□ | 施設に不足があった場合、自分が補助することができるか。 |
お金
最後はお金です。
生きている限り、切っても切れない存在、それがお金です。
展覧会もお金からは切っても切れませんね。
展覧会場を借りるのにもお金は必要です。
展覧会場(ギャラリー)の使用料金のかたちは大まかに2つの種類があります。
1つ目は一日いくらで貸し出しをするレンタル料式。
(いわゆる貸しギャラリーもこの形)。
2つ目は作品や物品の売り上げのうち、何パーセントかをギャラリーがもらう手数料式。
(いわゆる企画ギャラリーもこの形)
この二つの有無や、手数料(歩合)の比率などで使用料金が変わってきます。
私の場合、作品・物品の販売を伴わない形が好きなので、使用料金と立地条件を優先して会場を選択しています。
もし売り上げをあげたい場合、手数料の比率が重要になってきます。
□ | 会場の一日の使用料はいくらか。 |
□ | 作品・物品の販売の手数料はいくらか。 |
□ | その他経費や手数料はかかるのか。 |
使用料がタダで、手数料が70%。
使用料が1日1万円で、手数料が30%
使用料が1日10万円で、手数料は0%
これらは一例ですが様々な形があります。
どれくらいの比率が一番納得できるのか検討しましょう。
また使用料に関しては一週間を一単位としてレンタルしているところもあります。一単位当たり○○円というものです。
バラ売り不可の1ダース買い商品みたいな感じですね。
他にも有料の展覧会をする場合は、
無料で展覧会をするときよりも割高になる場合もある(公共施設の場合、チケット販売は利益追求とみなされる)ので、
細かなルールは展覧会場によって異なります。
展覧会場の使用料金に加えて、ポストカードやチラシ、キャプションなど細かな経費もかかってきます。
この話は後半で説明します。
展覧会場を決めるための質問集
この章は説明が少し長くなりましたので、
結局展覧会担当者には何聞けばいいの?
というかたが出てくるかと思います。
そこで会場担当者への質問集ということでこの章をまとめます。
時間 | 展覧会を開きたいのですが〇月〇日から〇月〇日の間で空いている日にちはありますか。 |
時間 | 搬入の日時、搬出の日時はいつぐらいになりますか。 |
人 | 展覧会場の雰囲気や設備などを見たいので、直接お会いしていくつか質問してもよろしいでしょうか。 お会いできる日時を教えてくだされば幸いです。 |
人 | 会場は会場担当者が常に在廊されていますか。 もしくは会場には私が常に在廊しますか。 可能なら在廊をしたいのですが、可能ですか。 |
場所 | 近くの駅やバスなどを教えてくれませんか。 |
場所 | ここから○○駅まで行くときにはどのような道を通ればいいですか。 |
場所 | 設備や備品についてお伺いしたいのですが、どのようなものがありますか。 ピクチャーレールはありますか。 ワイヤーは何本ありますか。 ガラスケースの大きさはいくつですか。 会場の平面図はありますか。 壁の高さは何メートルですか。など |
お金 | 一日の使用料金はいくらになりますか。 一コマの料金はいくらになりますか。 |
お金 | 作品の販売は可能ですか。 可能な場合、手数料(歩合)はいくらほどになりますか。 |
お金 | ハガキや図録などの物品は販売可能ですか。 可能な場合、手数料(歩合)はいくらほどになりますか。 |
他にもわからなかったことや思い出したことは質問しましょう。
質問をせずに、勝手に行うと会場担当者が不快な思いをし、
施設の利用禁止、最悪の場合出入り禁止になる場合があります。
質問と聞いたことのメモはしっかり取りましょう。
また、余談ですが下のような質問の仕方は避けましょう。
- 駅から遠いのですが、バスはとおってないのですか。
- ライトとかピクチャーレールなどの設備はないのですか。
- 他の会場に比べて使用料金が高いのですがどうしてですか。
- 他の会場だと販売してよいのにどうして販売してはいけないのですか。
冗談みたいなことを書いていますが、たまに口が滑って言ってしまう。
比較的ネガティブな人は自然と口から出てしまいます。
(かくいう自分も過去にネガティブなことを滑って言ってしまって失敗しています。
他の方には失敗してほしくないためあえて書かかせてもらっています。)
基本的に
・他と比較する、
・自分のネガティブな感情の言葉
・ネガティブな言葉
の質問・発言は避けましょう。
では会場が決まったら次は展覧会の広告を出していきましょう。
3.展覧会の広告をする
展覧会の広告をしましょう。
展覧会の広告をすると、色々な人と出会い、
多くの人に作品を見てもらえます。
せっかくならたくさんの人に自分の作品をみてほしいですよね。
恥ずかしがらずに、どんどん広告をしていきましょう。
下には広告の種類と方法を記載しています。
広告の種類
案内状
案内状は前回展覧会をしたことがあり芳名帳に名前や住所を書いてくださったお客様に送るハガキです。案内状の場合、
他の広告と比べるとかなりの確率でまた展覧会に来てくださるので、
もれなく送りましょう。
下で紹介する案内ハガキと兼用しても構いません。
その場合、一筆「前回来場してくださりありがとうございます。」「ぜひ来てください。」や「ご来場お待ちしております。」など書かれると気持ちが伝わって相手も喜んでくれます。
もし展覧会が初めての場合、下で紹介する広告の種類と方法を試してみてください。
ハガキ
ハガキを作りましょう。これは最低限作った方が良いです。
今はデジタル化が発達しているので
「ハガキなんてちょっと古くない?」
と思われるかもしれませんが、そんなことはありません!
むしろ、アナログなハガキは相手に情報がビビッと伝わりやすいですしQRコードなどをはがきにつければネット上のホームページやYouTubeにつながり、デジタルとも融合しやすい。
おまけに懐に忍ばせて置けば、いざというときに興味のある方にお渡しできます。
私の場合、デジタルよりもアナログの方が親しんでいる年代の方が多くいらっしゃるので、ハガキは必ず作ります。
ポスター
ポスターという広告の種類もあります。
A4くらいのポスターがいいですね。A4のポスターの場合だと後述しますが、施設に貼ってもらいやすいからです。
ハガキと比べて携帯性は低いですが、広告性が高いので、もし予算に余裕があれば作っておくとお得です。
個人的に展覧会をするときにテンションが上がりますので、
モチベーションアップしたい方にもおすすめします。
SNS
TwitterやInstagram、FacebookなどのSNS(Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス))は非常に強力な手段です。
ですが、これらは数カ月や数年単位で育てるものなので、
ここは歴戦のSNS戦士の方たちがいらっしゃるので指導を仰いでください。
今回は割愛させていただきます。
その他デジタル媒体
ブログやYouTubeなども種類としては挙げられます。
これもSNS同様、数カ月や数年単位で育てるものなので、
背中で語るデジタルマエストロの方々から学ばれた方が何百倍も参考になります。
デジタル広告媒体は研究が旺盛なので、自分の興味のあるジャンルに手を出してみるのもいいでしょう。
今回はアナログでコツコツできる方法を紹介します。
アナログの広告はあまり情報が少ないので、
もしかしたらあなたの知らない情報があるかもしれません。
是非ご一読してみてください。
展覧会広告の方法
広告の種類を紹介しました。じゃあこれでハガキもポスターも作ったぞ!準備満タンだ!さあ行くぞ!
…とその前にそのハガキとポスターどこにどう配るのかご存知でしょうか。
この章では展覧会の広告方法を紹介します。
新聞社に取材依頼する
展覧会を開くにあたって新聞社に取材を依頼するという広告の方法があります。
新聞社って取材してくれるの?
と思う方もいるかと思います。もちろん、中日新聞や毎日新聞、読売新聞の全国版の新聞の場合、競合が多く取材してもらえる機会は少ないでしょう。
しかし、地元の広報誌を一方地元の新聞紙の場合、取材依頼者が同じ地元だと取り上げてもらいやすく、ローカルであればあるほど、取材がされやすいです。
自分の住んでいる市(例えば名古屋市の中区 新聞社など)検索してみれば意外と地元の新聞社があるので、電話をかけてみたり、プレスリリースという取材依頼文を送ってみるのもよいでしょう。
私の場合、市役所の「広聴広報課」という課に電話をかけてその課を経由して新聞社にプレスリリースを送ってもらっています。
広聴広報課は市町村によって名称は異なると思うので、
「油絵の展覧会を開催させていただきたいので、新聞社に取材依頼をお願いしたいです。そのような仕事を担当している課はありますか。」
など、聞いてみるのもよいでしょう。
地元テレビ局に取材依頼する
新聞社に取材依頼のほかに、地元テレビ局に取材依頼をしてみるのもよいでしょう。
これも新聞社同様ローカルテレビ局であれば地元の人が美術展を開くと聞くと快く引き受けてくれる可能性があります。
これも『○○市 テレビ局』など検索してみると、地元のケーブルテレビがあれば、だいたい出てくるのでそこに電話などをかけて、取材依頼をしましょう。
私の場合、自分の住んでいる市のローカルテレビ局に直接電話し、資料が必要そうなら送付し、そのまでもよさそうなら直接依頼をしています。
公共施設にハガキ・ポスターを設置してもらう
公共施設にハガキやポスターを設置してもらうことができます。
公共施設の例として、美術館や、文化センター、市役所などが挙げられます。
基本的に公共施設には自分の利益を求めるビジネスや企業のハガキ、ポスターは営利目的ものもとされおかれることはほとんどありません。
一方油絵や日本画などの平面作品、彫刻作品などの美術展覧会は文化活動のくくりとされています。
文化活動に対しては、公共施設は寛容で「展覧会を開きたいのですが、ハガキやポスターを置いてもいいですか。」と事務の方に伺うと快く置かせてもらえます。
地域や施設によってルールや許可・不許可はまちまちなので、必ず事務局の方へ確認しましょう。
商業施設にハガキ・ポスターを設置してもらう
チェーン店の商業施設にハガキ・ポスターは基本的においてもらえる確率は低いです。
基本的に個人店舗でかつ、文化に対して理解のある人が店長だと設置してもらいやすいです。
見分けるコツとしては、
個人の飲食店に絵が飾ってある。
ハガキやポスターが設置されているブースがある。
などがあるとおいてもらえる確率が高くなります。
4.作品の事前準備
ではハガキやポスター、SNSでの広告も終わり
あと2週間くらい前になりました。
いよいよ作品を運ぶための事前準備になります。
基本的には作品はちゃんと会場に設営できるように
金具を付けて、周囲を梱包するようにしましょう。
平面作品に金具を付ける
平面作品(油絵、日本画など)を会場に設営するときには
- 吊るし金具がある額縁をつける
- キャンバスの裏に吊るし金具を付ける。
- 表装にする
という3つの方法があります。
私の場合、油絵を描いていますので、基本的には
作品が完成したら、吊るし金具がある額縁にはめ込んでいます。
だけど、大きな作品や額縁がない作品の場合はキャンバスやパネルに金具を付ける場合があります。
表装とは、簡単に言ってしまえば掛け軸のような形にして展示できるようにすることです。
これに関しては、日本画で絹や和紙、綿、化繊の布などで描いたものが対象になるので、日本画をやられている方はこの選択肢もあります。
作品を梱包する
では作品を梱包していきましょう。
油絵や日本画などの平面の絵画作品を梱包するときには、
表面に傷や汚れがつかないように保護したり、プチプチやダンボールなどで角が割れたり、しないように四隅を保護しましょう。
その他の準備
その他、必要なものを準備していきましょう。
例えば作品の下に貼るキャプション。
作品を見てくれる人へのウェルカムボード。
芳名帳に名前を書いてくれた人へのプレゼント。
物品販売のための図録やポストカードなど細かいものを準備していきましょう。
これらは会場の設営一週間前には完了します。
会場の設営に足りなさそうなものは買い足したり作ったりしていきましょう。
準備するもの | 内容 |
キャプション | 作品のタイトルや使用画材、技法、サイズ、制作年などを記載した作品の名札のようなもの |
ウェルカムボード | 美術展覧会へ来てくださった方や展覧会の趣旨をのせたりするもの。 |
芳名帳 | 美術展覧会に来た人が住所と名前を記載するもの。 ゲストカードという言い方もします。 |
ポストカード | よく美術展などでみるはがきサイズの作品をのせたカード。 |
図録 | 画集、イラスト集など、その作家の作品を画像(図版)で記録したもの。 |
キャプションに関しては、くっつき虫や虫ピンで留める場合がありますが、
展覧会場によってOKだったり、NGだったりするので、確認するのもよいです。
道具を準備する
展覧会場の設営の時に上で準備したものや制作したものはそのままでは取り付けることができません。
なので、この章では展覧会場の設営によく使う道具を紹介します。
道具の名前 | 内容 |
くっつき虫 | 練り消しゴムのようなもの。キャプションやウェルカムボードを貼る。掛け軸だったら、裏に張り付けて固定するための道具。 名わき役です。 |
虫ピン | 目立たない細い釘のようなもの。大きなボードも壁に打って付けることができるので、使えるなら使いましょう。 |
金槌、木槌(ハンマー) | 虫ピンを壁に打つためのもの。 |
メジャー | 作品の間の距離を測るためのもの。 |
水平器 | 作品が傾いてないか確認するためのもの。 |
マスキングテープ | 作品の配置する目安を付けたり、モノを仮止めをしたりする。 |
プラスドライバー、マイナスドライバー | 金具を付けたり、緩んでいたときにすぐに直せるようにしましょう。様々な太さや種類があるので、自分の持っている金具に合わせましょう。 |
眼鏡拭き・雑巾 | 額縁のアクリル板やガラスを拭くときに使います。 アクリル板の場合、除電タイプのシートなども使うと良いでしょう。 |
5.美術展会場の設営
道具も準備もできたら会場の設営になります。
会場設営と聞くと何したらいいのかわからない。
という方もいるかと思います。
人によっては言われなくても当たり前でしょうという方もいるかと思いますが、改めて確認をお願いします。
では美術展会場の設営について順を追って解説していきます。
美術展会場の担当者に事前の連絡をする
展覧会場の担当者に事前の連絡をしましょう。
すでに展覧会の搬入・搬出日、時間などが決まっているとは思いますが、
事前に電話などで連絡をするとよいでしょう。
もしかしたら、相手が忙しくて忘れているかもしれませんし、
何よりも、ちゃんと連絡してくれる人なんだと安心感があります。
美術展会場の担当者に挨拶をする
次に美術展会場の担当者に
「本日から展覧会をさせていただきます○○と申します。本日搬入をさせていただきますので、よろしくお願いします。」と挨拶をしましょう。
当然ではありますが、恥ずかしがって何も言わずに作業を始めると
(シャイな方ね)
と思ってくれればよいですが、
(不愛想な人だな)
と思われる可能性もあります。
こういうところで担当者とコミュニケーションをとり、
円滑に展覧会場設営を進めることができます。
お客様の入口、出口を確認する
入口にはウェルカムボードや芳名帳、展覧会のポスターなどを飾ります。
出口には「ありがとうございました」などのお礼の言葉を添えたボードなどがあるとお客様が気持ちよく帰っていただけます。
小規模な美術展覧会の場合、入り口と出口が一体になっている場合がありますが、その時も、常にお客様がどんな道をたどって作品を見るのかを確認しましょう。(お客様の導線を考える。)
作品の配置を考える
お客様の入り口、出口を確認したら作品の配置を考えていきましょう。
梱包をすべて剥がします。
油絵や日本画などの平面作品、彫刻などの立体作品もですが、まずは完全に固定をせず、マスキングテープでおおよその目安を付けて、検討します。
壁に絵画作品を飾る場合、まずはピクチャーレールに固定せず、壁に立てかけて全体感を見るのが良いでしょう。
二つの工程(お客様の出入り口を確認する、作品の配置を考える)は事前の準備段階で平面図や壁の高さ、床の長さ、面積を把握できるのなら、
さきに頭の中やパソコン、模型などを使ってイメージを膨らませると
展覧会場設営に戸惑わずに配置することができます。
作品を設置する
作品を設置していきましょう。
油絵などの平面作品はピクチャーレールがあれば、ピクチャーレールに吊るして配置します。
この時、水平は確認せず、全部を配置していきます。
まずは全部をピクチャーレールやフックなどで絵画をかけます。
この時点では作品の間と間のバランスがいいのか、配置はこれでいいのかと大まかな確認にしておきましょう。
絵画・直国作品の配置の調整をする
大まかに配置できたら、今度は調整をしていきます。
絵画作品の場合、水平器やメジャーなどを使って壁と並行か、垂直かなどを確認し、修正があればその都度調整します。
キャプション・その他準備品を設置する
作品の配置が確定したら、その下や横にキャプションを配置していきます。
キャプションを壁に貼り付けるときには、くっつき虫や虫ピンなどで貼り付けます。
出入口にウェルカムボード、芳名帳(ゲストカード)、ポストカード、椅子や机などを準備してお客様を迎える準備をしましょう。
展覧会設営の完了
展覧会設営が完了しました。
完了した時点で全体を確認しましょう。
お客様が展覧会場へ行ったときにどのような動きをしてくださるのか、実際に自分の足で動き、何も問題がなさそうだったらこれで完了です。
もし、途中でお客様が迷われそうな場所があれば、
「2Fにも作品があります。」「ガラスケースの中にも作品があります。」など、案内看板なども準備すると良いでしょう。
6.展覧会当日
ではいよいよ展覧会当日です。
展覧会の準備が終わってほっと一息つけますね。
自分の作品を存分に見ていただきましょう。
次の章ではもし自分が在廊している場合、
どのような行動をするといいのかを紹介していきます。
会期中の行動
お客様にご案内する
お客様がいらっしゃったら
「こんにちは、本日はご高覧ありがとうございます。」
と一声かけるだけでも印象が良くなります。
もちろんあまり話しかけられたくない人や、ただ単純に通り過ぎた人などもいますが、挨拶だけでも充分ですので恥ずかしがらずに挨拶をしてみてください。
私もあまり人に挨拶・話しかけるのは得意ではないですが、少しずつやっていくうちに楽しくなっていきます。
それらがきっかけで展覧会を見てくださり、お客様になってくれる場合があります。チャンスを逃さず行きましょう。
芳名帳に名前を書いていただく
芳名帳に名前を(できれば住所も)書いていただきましょう。
「ありがとうございます。こちらにご芳名帳ありますので、ご記入ください。」とお客様にご案内しましょう。
中には芳名帳の存在を知らない方がいる場合があるので、ご案内は必要です。
またプライバシーの関係であまり書きたがらない方もいらっしゃいますので「お名前だけでも結構ですので、書いていただけると嬉しいです。」と少しだけでも書いていただけると、そこから会話の糸口が見つかったり、話すきっかけになります。
作品の経路を案内する
芳名帳に名前を書いていただきましたら展覧会のスタートをご案内しましょう。
「ありがとうございます。作品はあちらから始まりますので、どうぞご高覧下さい。」と案内しましょう。
「また何かあればお気軽に話かけてください」と一言添えておくのもよいでしょう。
お客様の様子をうかがう
お客様が展覧会で作品を見てくださっています。
その時は
(はーやれやれ終わった終わった、ヒマだからスマホでもいじろう。)
(お客様の案内が終わったから、座ってゆっくりしておこう)
とお客様がいるときにだらだらするのはやめましょう。
お客様が見られているときはお客様の様子をうかがいましょう。
お客様を見ているとたくさんのお客様のタイプがいることがあります。
ここでは例をいくつか挙げて、どのようなお声がけをするのかを載せます。
展覧会をしていると、作品のタイトルや作品の内容について知りたいお客様だとこちらの方を見たり、少しきょろきょろされる場合があります。
その時には「何かきになることがありましたか」
と一声かけてみるのもよいでしょう。
また、ある一定の作品をまじまじと見られて止まっているお客様がいたら
「この作品、気になりますか。私好きな作品なんですよね」とお声がけするのもよいです。
その時に「ええ、まあ」と素っ気ない場合は、あまり話しかけられたくないお客様かシャイなお客様の場合があるので「また何かあればお気軽に聞いてくださいね。」と一言いって作品を見ていただきましょう。
また、全体の作品を半分くらいみられたお客様には
「作品のほういかがですか。」と言い、もし目録やパンフレットなどあれば
「良ければこちらに目録(パンフレット)があります。こちらも是非ご活用ください」と話しかけてみましょう。
このとき「いい作品ですね」や「この作品の作者ってどんなかたなの」と興味を持たれる方がいます。
その時は「ありがとうございます。」や「この作品の作者です」というようにしましょう。
私の場合、スタッフと間違えられるか、作者の息子と間違われる場合があったので、一応「作者です」と最後に一言添える場合があります。
お客様の様子をうかがうときには正面切って観察しています!
という感じだと、お客様に圧迫感がありますので、あくまでさりげなく、横目でちらっとお伺いする程度にしましょう。
以前私が別の展覧会場にお邪魔させてもらったときに、すごく見られたときがあり、圧迫感がすごく、居づらさを感じ作品を見るのをやめてしまいました。
なので、もしやられる方は、さりげなくを合言葉にお客様の様子を伺いましょう。
お礼をする
作品をすべて見終わって出口に行かれるお客様にはお礼をしましょう。
「ご高覧いただきありがとうございました。」と一言でも良いのでお礼を述べましょう。
もし別の展覧会(個展やグループ展)があった場合「次回の美術展覧会が○○であるのでそちらも是非ご覧ください。」とハガキなども渡すと良いでしょう。
天気が悪かったり、暑かったりした場合「天気が悪いのでお足元気を付けてくださいね。」や「暑いので熱中症には気を付けてくださいね。ゆっくり休まれてくださいね」など一言添えると良いでしょう。
また展覧会で打ち解けてこちらにいい印象を持たれたお客様がいれば
「次の展覧会のご案内ができますので、芳名帳にご住所を書いてくださると嬉しいです。」と言ってみましょう。
これで住所を書いてくださり、ご案内できるお客様もいるので、断られてもいいので、一度言うのが良いです。
その他
ここではかなり丁寧な言い方でお客様対応をしましたが、お客様によっては堅苦しい、なんか緊張していてこっちも緊張する、私のこと嫌いなのかとラフな対応が好みの方もいらっしゃいます。
なのであえてラフな対応をするということも大切になります。
「君かいたの?いいねえ!これだったらほしいな!」
「まじっすか!ありがとうございます!」
という対応もする場合があるので、そこはお客様と、自分の性格との兼ね合いかなと思います。
とにかく相手を思いやる気持ちがあれば、お客様への対応は必然的にでてきます。
展覧会の終わり方
展覧会が終わり、いよいよ搬出です。
「あー展覧会おわった!やりきったぞ!」
という達成感があります。おめでとうございます!
が、ここであともう少し頑張ると、もっといい展覧会になりますよ。
展覧会の開き方マニュアルもあと少しです!
最後の章も読んでくださいね。
1.展覧会場を片付ける
展覧会場を片付けていきましょう。
片付ける際には会場関係者に
「展覧会場を貸してくださりありがとうございました。今から搬出作業をさせてもらうのでよろしくお願いします。」
と声をかけてから作業に移りましょう。
作品を梱包して、片付けます。
その後、キャプションやウェルカムボード、机やいすを片付けます。
ゴミが残っていたら拾いましょう。
また、可能ならば掃除もしていくのが理想的です。
2.会場関係者にお礼をする
展覧会場を片付け、一息ついたら会場関係者(担当者)にお礼を言いましょう。
「○○(担当者名)さんのおかげで展覧会を無事に終えることができました。ありがとうございました。また、次の機会があればよろしくお願いします。」
と言うだけでもいいので、お礼をしましょう。
実際、展覧会担当者のおかげで展覧会ができたのですから。
3.お客様にお礼状を書く
展覧会が終了して、片付けも終わって、会場の方にもお礼を言いました。
展覧会が終了して一週間ぐらい落ち着いたくらいに、
お客様にお礼状を書くと理想的です。
芳名帳に住所と名前を書いてくださった方に送るか、
作品を販売している方なら作品を購入してくれたお客様に
お礼状を送るのか、それはあなた次第です。
もし、お客様にお礼状を書くのが難しい場合、
次の展覧会の案内ハガキに
お礼を書きながら、案内するということもできます。
最後に
かなり長い文章になりましたが、いかがでしたでしょうか。
個展、グループ展のやり方がわかった!
なんとなく展覧会の全体像が見えてきた。
と思ってくだされば幸いです。
ここで沢山のことを書いて
(ちゃんと全部できるか不安だな…)
と思う方もいるかもしれません。
安心してください。
最初は失敗して当然なので、まずは展覧会を開いてみましょう。
その中で自分のスタイルに合ったやり方が出てきます。
行動することが一番大きな成功なのですから。
では「これで安心!展覧会の開き方マニュアル」を
終わらせていただきます。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
他にもあなたのアートライフをより豊かにする情報を
シェアしています。
よければそちらもご覧ください。
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