「油絵で有名な画家」と聞いてまず思い浮かぶのは誰でしょう。
モナ・リザを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチ、
燃えるような星空を描いたフィンセント・ファン・ゴッホ──。
しかし、世界にはその名を残した多くの画家たちがいます。
この記事では、美術史的な文脈とともに、
彼らの作品をどう鑑賞すべきか、
そしてなぜ“今も心を打つのか”を、
さっくりじっくり解説していきます。
世界の油絵画家20選
1. レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)

ルネサンス最大の巨匠にして万能の天才。
代表作はもちろん『モナ・リザ』(ルーヴル美術館所蔵)。

柔らかなスフマート技法によって、
光と空気の層を感じさせる筆致が特徴です。
鑑賞の際は、背景のぼんやりとした山々と
女性の表情の微妙な変化に注目してみてください。
どちらも時間の流れを封じ込めたような静けさを感じます。
2. フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)

『星月夜』(ニューヨーク近代美術館)をはじめ、
厚塗りの絵具と渦を巻くような筆致が特徴です。
![『ローヌ川の星月夜』1888年9月、アルル。油彩、キャンバス、73 × 92 cm。オルセー美術館[168]F 474, JH 1592。](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/94/Starry_Night_Over_the_Rhone.jpg/800px-Starry_Night_Over_the_Rhone.jpg)
彼の油彩は感情の高まりをそのままキャンバスに刻んだようです。
遠目で観ると全体がうねるように動き、
近づくと筆のタッチがまるで呼吸するかのよう。
彼の孤独と希望の両方が感じられますね。
3. レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn)

バロック期の巨匠であり、光と影を自在に操った画家。
『夜警』(アムステルダム国立美術館)は、
闇の中に差し込む一条の光で人物の心理を語ります。

鑑賞のポイントは、光の方向。
主題だけでなく、“見る者自身を照らす構図”になっているのが彼の真骨頂です。
4. ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)

静謐を描く画家として知られるフェルメール。
『真珠の耳飾りの少女』(マウリッツハイス美術館)は、
まるで一瞬の呼吸を閉じ込めたような作品です。

淡い光が少女の頬を包み、瞳には観る者の存在が映り込む。
静けさの中に温度を感じるまさに“静謐の芸術”です。
5. パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)
『ゲルニカ』(ソフィア王妃芸術センター)に代表されるように、
20世紀を象徴する油彩画家。
キュビスムの革新者として、形の概念を根本から問い直しました。
鑑賞の際は“形の破壊”ではなく、
“再構築された現実”として眺めると、
彼の思考の深さが見えてきます。
キュビズムについてはまた別の記事で紹介します。
6. クロード・モネ(Claude Monet)

印象派の代表。『睡蓮』シリーズでは、
時間の移ろいと光の変化を油彩で追いました。

絵筆の跡が溶けるように流れ、色が空気と混ざり合う瞬間に生命が宿る。
離れて見ると自然そのもの、近づくと抽象画のよう──まさに視覚の魔術師です。
7. ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)

人肌の柔らかさをこれほどまでに描いた画家は少ないでしょう。
代表作『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』は、
陽光と人の幸福をそのまま封じ込めた作品。
![『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』1876年。油彩、キャンバス、131 × 175 cm。オルセー美術館[110]。第3回印象派展出品。](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/21/Pierre-Auguste_Renoir%2C_Le_Moulin_de_la_Galette.jpg/800px-Pierre-Auguste_Renoir%2C_Le_Moulin_de_la_Galette.jpg)
鑑賞する時は、輪郭の曖昧さに注目。
まるで絵全体がひとつの呼吸をしているかのようです。
8. グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)

ウィーン分離派を代表する象徴主義の画家。
『接吻』(オーストリア美術館)は、金箔の装飾と人肌の対比が官能的。
構図は正方形でありながら、心理的な揺れが見る者を惹きつけます。

近くでいると美しいモザイク画のように、
遠くでみると恋人たちの親愛が、
二重の世界が感じられます。
9. フランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco de Goya)

スペインの宮廷画家でありながら、後期には人間の暗部を描いた画家。
『我が子を喰らうサトゥルヌス』は、
その狂気の象徴。油絵の暗黒面を知るには必見です。
鑑賞のポイントは“筆跡の荒れ”。
理性を捨てた人間の心そのものが描かれています。

この作品は黒い絵と言われるシリーズのひとつ。
人間の様々な暗部を描き出したこの黒い絵シリーズは
見たくないのに見てしまう。
そんな魔力があります。
10. カラヴァッジョ(Caravaggio)

明暗法(キアロスクーロ)の祖と呼ばれるバロックの革命児。
『聖マタイの召命』(サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会)は、
光と影のドラマそのものです。

絵の光がまるでステージの照明のように語りかけてくる。
劇的構図の起点となった人物です。
ちなみにカラヴァッジョはあまりにもブームで
作風を真似た画家たちがこぞって現れ
彼らのことはカラヴァッジョスキと呼ばれています。
11. ヨハン・セバスティアン・ルーベンス(Peter Paul Rubens)

生命力あふれる人体表現。
『キリスト昇架』(聖母大聖堂)では、
筋肉の張りと光の反射が一体となり、動と静がせめぎ合う。

筆致のスピード感が観る者の視線を舞台に引き込みます。
12. ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet)

『落穂拾い』(オルセー美術館)は、労働と祈りの絵。
油絵具の質感が人間の温もりを宿します。
![『落穂拾い』1857年。油彩、キャンバス、83.5 × 110 cm。オルセー美術館[64]。1857年サロン入選。](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/87/Jean-Fran%C3%A7ois_Millet_-_Gleaners_-_Google_Art_Project.jpg/800px-Jean-Fran%C3%A7ois_Millet_-_Gleaners_-_Google_Art_Project.jpg)
光はやさしく、影は静か。彼の絵には“日常の詩”があります。
13. エドゥアール・マネ(Édouard Manet)

『草上の昼食』で近代絵画の扉を開いた画家。
平面的な構成と強い黒の使い方が特徴。

鑑賞ポイントは「どう描いたか」に加え「何を描いたか」。
彼の革新性は現代絵画の出発点と言えるでしょう。
14. ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)

印象派とキュビスムをつなぐ架け橋。
『サント・ヴィクトワール山』では、
形の“構造”を探るように筆を置きます。
近代絵画の理性と構築性の源流。

絵を見るという行為そのものを問う作品群です。
近代絵画の父という異名も頷けます。
15. ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)

アクション・ペインティングの象徴。
キャンバスを床に置き、絵具を滴らせて描く。
『No.5, 1948』などに見られるランダムな線の集合は、
実は高度に計算されたリズムの構造です。
16. ディエゴ・ベラスケス(Diego Velázquez)

『ラス・メニーナス』(プラド美術館)は、
画家・モデル・観客が交錯するメタ的(で多重的な)構図。

写実の完成形でありながら、
絵の中に“見る”という行為そのものを組み込んだ哲学的傑作です。
17. ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Titian)

ヴェネツィア派の巨匠。豊かな色彩と肌の輝き。
『ウルビーノのヴィーナス』(ウフィツィ美術館)は、
後のルーベンスやマネに影響を与えました。

彼の赤は、どの時代よりも深く温かい表現だと感じます。
18. エル・グレコ(El Greco)

細長い人体と宗教的な光。
『オルガス伯の埋葬』(トレド聖堂)は、
地上と天上をつなぐ幻想的な構図。
形が歪んでいるようでいて、彼の魂を表現している。

そう感じる作品です。
19. マルク・シャガール(Marc Chagall)

夢と記憶を描いた画家。『誕生日』などでは、
重力のない空間で愛と郷愁を描きます。
油彩の色がまるで詩のように漂う。
現実を越えた“心の風景画家”です。
20. フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)

メキシコの女性画家であり、
自らの痛みを絵に昇華しました。
『折れた背骨』など、内省的で強靭な世界。
油彩がまるで皮膚の延長のよう。
鑑賞する側の感情を強く揺さぶります。
NHKのびじゅチューンでもご存知の方がいるかもしれませんね。
日本の有名な油絵画家10選
では次に日本の有名な油絵画家を紹介します。
日本の油絵画家も負けてはいません。
むしろ日本独自の美意識を追求した画家たちと作品を紹介します。
1. 黒田清輝

明治期の日本洋画の父。
フランス留学を経て印象派を日本に紹介。
代表作『湖畔』(東京国立博物館)は、
光の捉え方が非常に繊細。

西洋の技法に“日本の静けさ”を融合させた最初の成功例です。
2. 藤島武二

官展で活躍し、『蝶』などで知られる。
女性像の柔らかい筆致と構図の優雅さが特徴。

装飾性と精神性のバランスが絶妙です。
3. 岸田劉生

大正期のリアリズムの代表。
『麗子像』シリーズでは、独自の“内面描写”を追求。
質感の重い油彩が心の深部を照らします。

日本人の心象を油彩で描いた希有な存在。
僕も実物の麗子像を拝見した時に
麗子のでろりとした存在をありありと感じました。
4. 東郷青児

独特の曲線と青を基調とした色彩で女性像を描いた画家。
代表作『望郷』などに見られる滑らかな線。
観る人に安心感と郷愁を与えます。
5. 梅原龍三郎

南仏の太陽に魅せられた色彩の魔術師。
『バラ』や『富士』など、絵具の厚みそのものが生命を感じます。
ルノワールに学びながらも、より強いマチエールで“日本の熱”を描きました。
6. 小磯良平

均整の取れた構図と清潔な色調。
『婦人像』シリーズでは理想化された美が静かに息づく。
戦後の日本洋画を支えた静謐な理想主義者です。
7. 中川一政
文筆家としても知られ、油彩には独特のリズム感があります。
『バラ』や『海』を題材にした作品は、
激しい筆致の中に祈りが宿る。
日本的情感を油で描いた先駆者。
8. 絹谷幸二

鮮烈な色彩と立体感ある筆致。
テンペラと油彩を併用し、
現代的な宗教性を表現。
彼の描く生命賛歌は、まさに“絵の中に熱気がある”作品。
9. 今井俊満

戦後日本の抽象表現主義の旗手。
厚塗りと偶発性を生かし、精神の爆発を描きました。
油絵が現代の詩になり得ることを示した人物。
10. 千住博

滝の連作で知られる現代の巨匠。
油彩だけでなく日本画の技法も融合。
静と動のバランス、そして“時間の流れ”を描く筆致。
観る人に瞑想の感覚を与えます。
まとめ
油絵とは、単なる技法ではなく、時代と巨匠、そしてあなたの心映す鏡です。
世界の巨匠から日本の画家まで、
油彩という共通の表現で人間の内面を描き出してきました。
どの作品にも共通しているのは、「光をどう捉えたか」という問い。
あなたが次に名画を前にした時、
その光の奥に画家の鼓動を感じてみてください。
今回の30人の巨匠いかがでしょうか。
ここでは紹介できなかった巨匠たちは
まだまだたくさんいます。
また別の記事でお会いしましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。










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