犬は何を意味する?絵画においての犬の寓意(アレゴリー)

こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。今回は数ある寓意(アレゴリー)の中でも東洋西洋問わず人気のある犬に焦点を当てて紹介したいと思います。

寓意(アレゴリー)って何?って方はこちらの記事がおすすめです。

それではよろしくお願いします。

犬が持つ象徴と寓意

動物が象徴(シンボル)または寓意(アレゴリー)になる場合は、その動物の見た目や、習性から意味を取られる場合が多いです。

忠節・貞節の象徴

犬は最古の家畜としたり、愛玩用のペットとして昔から飼われています。そのため、主人を裏切らないことから忠節という象徴があります。西洋絵画で最もよく見られます。

例えば、ヤン・ファン・アイクの『アルノルフィーニ夫妻像』では、夫婦の間に犬がいます。犬が女性の傍らにいる場合、それは女性の夫への忠節(貞節)を意味します。

ヤン・ファン・アイク作『アルノフィーニ夫妻像』1434年

他にもアンリ・ルソーの『田舎の結婚式』、トマス・ゲインズバラの『アンドリューズ夫妻の肖像』にも見られます。

アンリ・ルソー作『田舎の結婚式』1905年

とにかく、結婚式や夫妻が描かれていると年代問わずセットで犬が描かれていることが多いです。西洋絵画ではほとんどの場合、忠節の象徴として用いられます。

トマス・ゲインズバラ作『アンドリューズ夫妻の肖像』1749年

邪悪・不浄の象徴

ユダヤ教あるいはユダヤ人の間では邪悪な生き物としてみなされています。

ユダヤ教聖書の『レビ記』では

すべて四つの足で歩く獣のうち、その足の裏のふくらみで歩くものは皆あなたがたに汚れたものである。

『レビ記』11章27節より引用 引用元:レビ記(口語訳)

つまり、肉球が(ありかぎづめの)あるものは不浄な生き物とみなされました。犬もそれに該当します。しかし、現在では一般的にオオカミやジャッカルなどよりも賢い動物とみなされていますのでこの象徴は薄い印象です。

しかし、ピテール・パウル・ルーベンスの『最後の晩餐』では、キリストを裏切ったユダの足元に犬がいます。

ピテール・パウル・ルーベンス作『最後の晩餐』

ヨハネによる福音書では

この一きれの食物を受けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは彼に言われた、「しようとしていることを、今すぐするがよい」。

『ヨハネによる福音書』13章27節より引用 引用元:Wikisource

と記載されています。つまり、ユダの足元にいる犬はサタンであり、サタンは邪悪を象徴していますので、犬を邪悪の象徴として使用しているように思えます。

アドニスのアトリビュート

ピーテル・パウル・ルーベンス作『ヴィーナスとアドニス』

犬はギリシャ神話に出てくる美少年アドニス(アドーニス)のアトリビュートとなっています。

アドニスはヴィーナスに愛され、アフロディーテを愛した少年で、狩りをしている最中、猪に襲われてしまい死んでしまいました。

狩猟が好きな少年でしたので、狩猟につかう槍と犬が彼のアトリビュートとなりました。

冥界

犬を冥界の象徴として使用している例もあります。

例えばギリシア神話ではケルベロス、エジプト神話ではアヌビスのように冥界に存在する犬がいます。また、北欧神話でもガルムが登場します。

このことから冥界の象徴とも言えます。

地獄(冥界)の番犬ケルベロス
エジプトの神話に登場する冥界の神アヌビス。犬をモチーフにしている
冥界の番犬ガルム・フェンリルと同一視される場合もあります。

まとめ

犬は猫と並んで身近にいることから多くの象徴があります。もし絵画を見つけて犬を見たときは、この犬は何を意味しているのか。と考えてみてみると面白いかもしれませんね。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

猫にも意外な寓意が込められていることも知っていましたか?犬との違いを知ると楽しいですよ。