フレスコ画とは。フレスコ画の特徴と作品例

フレスコ画とは。フレスコ画の特徴と作品例

こんにちは、岩下 幸圓(イワシタ コウエン)です。

さて今回はフレスコ画について紹介していこうと思います。

フレスコ画という単語は知っているけどなんでフレスコなのという方にお勧めできる記事です。

あの名画も実はフレスコ画であることをご存じでしたか?そちらも解明しながら紹介したいと思います。

それではよろしくお願いします。

フレスコ画とは

フレスコは壁画を描く際に用いられる技術です。

語源はイタリア語の Pittura a fresco、日本語に訳すと「塗りたての湿った面に描いた絵」という意味です。最後のfrescoをフレスコと言い回し現在の名前になりました。

その技法を使った絵がフレスコ画として定着していきました。

フレスコ画の描き方

ではそんなフレスコ画はどのように描かれるのか。

それは語源にヒントが隠されています。

フレスコの基本的な描き方は石灰を主成分としたモルタルを壁に塗り付け、それが固まらないうちに水で溶かした絵具を壁に付け、彩色します。

フレスコに用いられる絵具は水と顔料だけで接着剤の成分が含まれていません。

フレスコでは絵具の水分と、壁の水分を連結させて、壁のモルタルと一体化させます。

その後、乾燥するにしたがって、モルタルに含まれるカルシウム分が空気に触れ、炭酸カルシウムの膜を形成します。

炭酸ガス+カルシウム=炭酸カルシウムの膜が顔料を壁にくっつける

この炭酸カルシウムの膜が顔料を包み込み、壁に密着させるのです。

つまりフレスコ画は炭酸カルシウムを接着剤の代わりに使用しています。

これがフレスコの基本的な描き方です。

ではこの描き方以外に、フレスコはどのような種類があるのでしょうか。

フレスコ画の種類

真性フレスコ(ブオン・フレスコ)

フレスコ画は基本的な描き方であるものを真性フレスコ、またはブオン・フレスコ bunon fresco と言います。しかしこれだと乾燥が早いため描く時間が制約されます。

そこで開発されたのがメッツォ・フレスコです。

メッツォ・フレスコ(メッゾ・フレスコ)

メッツォ・フレスコは乾燥したモルタルの壁に、色を付けたモルタルで彩色する方法です。これによりフレスコ画を描くのが簡単で、17世紀以後のヨーロッパで多用されるようになりました。

フレスコ・セッコ

その後、フレスコ・セッコと言われる方法も編み出されました。

これは完全に乾燥した壁に、テンペラ絵具などの絵具で加筆する方法です。

この方法はフレスコと併用されることもしばしばありました。

フレスコの支持体

フレスコの支持体は基本的に壁です。その壁はどのように作られているのか紹介します。

①トルリザチオ②アリチオ③シノピア④イントナコ⑤絵具(顔料+水)⑥炭酸カルシウムの被膜

下塗り-トルリザチオ

まず、レンガや切石を積んだ壁に砂と石灰で下塗りをします。

二度目の下塗り-アリチオ

砂と石灰のモルタルで二度目の下塗りをします。

その後。乾燥したアリチオを削り平らにします。

下絵を描く-シノピア

大英博物館:ミケランジェロの素描 引用元

平らにした壁に顔料で下塗りをします。

これをする理由として、画面全体のバランスの確認と一日どれくらいが出来るかの確認をするためです。

仕上げ塗り-イントナコ

目の細かい石灰モルタルを壁に塗ります。イントナコは一日に描ける面積だけ塗り、塗ったらすぐに水で溶いた顔料で彩色をします。

ジオルナータ

この一日分の作業分の区分をジオルナータ Giornata と呼びます。

Giorno(日)の派生語で、もともとは一日仕事の意味があります。

このジオルナータの継ぎ目を目立たなくするためにもシノピアでしっかりと下描きをする必要があります。

フレスコ・セッコ

このフレスコの描き方では細かいニュアンスや表現が出来ませんので、セッコを用います。

主な方法としてテンペラやカゼイン・テンペラを用いた加筆があります。

最も多く用いられたのは14世紀以後のイタリアの盛期ルネッサンスです。

フレスコの歴史

フレスコの起源

現存する世界最古の天然のフレスコ画『ラスコーの壁画』紀元前15000年と言われている。

フレスコの起源は定かではありませんが、石灰を用いた壁づくりやそこに顔料を定着させる方法は美術史を辿っていくと紀元前にすでに原形がありました。

アナトリア高原の遺跡で発見された8000年くらい前の日干しレンガ面にある彩色や

4500年年くらい前のメソポタミアのマリの宮殿の壁画などがあります。

マヤ文明のサンバルトロ遺跡にも壁画があります。

その他にもクレタのクノッソス宮殿の壁画、エトルリアの墳墓壁画などもフレスコの原形を持っています。

フレスコ・セッコの誕生

イタリアの盛期ルネッサンスではフレスコの上に別の方法で絵を描くフレスコ・セッコが誕生しました。

フレスコの作品例

ラファエロ作『アテナイの学堂』 1509-1510、フレスコ、500×770cm

この『アテナイの学堂』もフレスコ画です。500年以上前に制作されているものですが、色彩は落ちることなく鮮やかなままです。

これはフレスコの特徴である炭酸カルシウムが膜を作り丈夫な画面になるからです。

ミケランジェロ・ブオナローティ作『最後の審判』1536年-1541年

システィーナ礼拝堂にある『最後の審判』も500年程度前のものですが鮮やかなまま現存しています。

システィーナ礼拝堂内部

その他にもフラ・アンジェリコ作『受胎告知』や修道院、教会などの宗教関係の建物に多くのフレスコが現存し、当時の色彩のまま壁面や天井を彩っています。

フラ・アンジェリコ作『受胎告知』1437-46年頃、サン・マルコ美術館所蔵
カーリエ博物館『主の復活』
フェラポントフ修道院『ミラの聖ニコライ』

まとめ

丈夫で堅牢な技法として盛期ルネサンスで開花したフレスコ画。その歴史をたどると昔から人類の表現の1つとして用いられたことが分かります。

壁面や天井を彩るフレスコ画は、これからも私たちにその色彩を見せてくれるでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

フレスコ画を描いた画家ジョットも紹介しています。そちらもご覧いただければ幸いです。